[同時多発テロから22年 - 人類は暴力を克服できるのか] NHKのドキュメンタリー番組『暴力の人類史』

  
NHKのドキュメンタリー番組『暴力の人類史 ~悪魔の誘惑と戦う』を観ました。


原作は、米国の認知心理学者スティーブン・ピンカーのベストセラー書籍『暴力の人類史』です。


上下巻合わせて1300ページ(上巻だけでも652ページ)という途方もないボリュームの超大作です。

今日はちょうど9月11日、アメリカの同時多発テロ事件から22年ですね。

以下に所感をまとめました。

1. 暴力の人類史(NHK)

以下はスティーブン・ピンカーのベストセラー書籍『暴力の人類史』の出版社内容説明。

「人類はこの世界から暴力を根絶し、平和に向かうことができるのか?先史時代から現代まで人類の歴史を通観しながら、神経生物学や脳科学など最新知見を総動員し、暴力をめぐる人間の本性を精緻に分析。壮大なスケールで大胆な仮説を提示する、人類の未来への希望の書」
「わたしが読んだなかでもっとも重要な本の一冊。それも「今年の」ではなく「永遠の一冊」だ」(ビル・ゲイツ)


『暴力の人類史』の著者スティーブン・ピンカーは1954年生まれの米国の認知心理学者です(以下はwikiより引用)。

スティーブン・ピンカー(出典:Gettyimages)

専門分野は視覚的認知能力と子供の言語能力の発達である。ノーム・チョムスキーの生成文法の影響を受け、脳機能としての言語能力や、言語獲得の問題について研究し著作を発表している。言語が自然選択によって形作られた「本能」あるいは生物学的適応であるという概念を大衆化したことでよく知られている。この点では言語能力が他の適応の副産物であると考えるチョムスキーやその他の人々と対立する。

The Language Instinct (1994年、邦訳『言語を生みだす本能』)、How the Mind Works (1997年、邦訳『心の仕組み』)、Words and Rules (2000年)、The Blank Slate (2002年、邦訳『人間の本性を考える』)、The Stuff of Thought (2007)は数多くの賞を受賞し、いずれもベストセラーになった。特に『心の仕組み』と『人間の本性を考える』はピューリツァー賞の最終候補になった。また、2004年には米タイム誌の「最も影響力のある100人」に選ばれた。2005年にはプロスペクト誌、フォーリンポリシー誌で「知識人トップ100人」のうち一人に選ばれた。

(引用おわり)

2023年3月に同じ題名のNHK BS放送を観ました。


番組のオリジナルは、米国PBS制作の "The Violence Paradox"というドキュメンタリー作品で、NHKで放送されたのはその抜粋版です。

NOVA: The Violence Paradox - PBS (FULL DOCUMENTARY)

以下はそのドキュメンタリー番組から。


暴力は人間特有のものではなく、子孫を残すあらゆる生き物に備わっています


日常感じるのとは反対に、犯罪率は年々減少しているという


スティーブン・ピンカー教授の登場


イギリスの殺人事件数の推移(13~21世紀)を調べたところ、驚くべきことに、暴力は減り続けている


ピンカー教授は、暴力を減らすメカニズムを解明して、犯罪をさらに減らすことができると主張します


マルタ・ラー教授(ケンブリッジ大学 古人類学者)による古代の犯行現場の調査


恵まれた土地を巡る争いで、外部からの集団の襲撃を受けた痕跡が見つかった


人間には悪魔と天使それぞれが宿っている


刈郷研究員(カリフォルニア工科大学)のマウス実験


脳の視床下部という領域を刺激すると、マウスは攻撃的になる


カレン・ウィン教授(イェール大学 発達心理学者)による乳児を対象とした実験


芝居を見せた乳児の反応は。。。


悪いことをしたぬいぐるみを選ばない→善悪の判別は生まれ持って備わっている


暴力を食い止める大きな要因としての国家


納税者が減らないように、国家は暴力を抑止した


法の支配がある国家社会は暴力の抑止につながる


一方、生贄や拷問といった暴力は、国家が主導していた


裁判記録から刑務所の書類まで、過去800年のあらゆる記録を調査した結果


すべての国や地域で暴力は減少していた


殺人件数は劇的に減少


文明化で社会はより相互依存的になり、暴力は減少


マナーは自制心の現れ


侮辱されたら戦いを挑むのではなく、我慢するのが自制心


エイドリアン・レイン(ペンシルバニア大学、犯罪心理学者)の実験


前頭前皮質


前頭前皮質を活性化させると犯罪の意思が3~4割低下


平等という思想の登場


読み書きの能力と印刷の発展


小説を読むと他者に感情移入するようになる


表情から感情を理解する


科学技術で人間の行動原理が変化


太平天国の乱では死者5000万人!


第二次世界大戦では死者8000万人


トマス・グルズブ教授(SWPS大学 心理学者)の実験


残虐な命令に従ってしまう検証


戦争の残虐性



テロの脅威


武力衝突による死亡件数は激減している





ここまで暴力が減少したのは珍しい


基本的人権宣言(国連)


日々のニュースからは暴力がありふれていると思ってしまう


歴史のなかで暴力が減少してきたことに気付くと世界が変わって見える


人類は正しいことをしてきたのです、それを踏まえて未来へ向かいましょう(スティーブン・ピンカー)

2. まとめ

NHKのドキュメンタリー番組『暴力の人類史 ~悪魔の誘惑と戦う』は、『暴力の人類史』のエッセンスを凝縮したような質の高い番組でした。


[現代は歴史上最も平和な時代なのか]『暴力の人類史(上)』(スティーブン・ピンカー) [目に見えないゴリラ] 『錯覚の科学』(チャプリス/シモンズ)が解き明かす思い込みと錯覚の世界  [対立を超えるための道徳心理学]『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(ジョナサン・ハイト)より  [悪徳は社会の繁栄の源である] ベストセラー経済書『善と悪の経済学』(トーマス・セドラチェク)より

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