映画の内容については今さら紹介する必要はありませんが、前作の『ゴッドファーザー PART I』『ゴッドファーザー PART II』と比肩の映画史に残る傑作です。
特に惨劇の舞台となる終盤のオペラハウスのシーンは、ドラマチックな展開のなかに、登場人間それぞれの本性や感情が見事に凝縮されているシリーズ最大の見どころだと思います。
注意:以下はネタバレ満載の内容です。
1. オペラハウスのシーン
アル・パチーノ演じるマイケル・コルリオーネが、オペラデビューすることになった息子のアンソニーの晴れの舞台を祝うために、家族や親族とともにシチリア島のオペラハウスで観劇するシーンです。ちなみに映画の舞台となったのはシチリア島パレルモにあるマッシモ劇場、ヨーロッパで3番目に大きいオペラ劇場でもあります。
マッシモ劇場
オペラはマスカーニの歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』
『カヴァレリア・ルスティカーナ』は、レオンカヴァッロの『道化師』とともに、イタリアオペラのいわゆるヴェリズモ・オペラの代表作ですね。
ヴェリズモ・オペラとは、人々の日常生活や暴力などの描写を多用し、音楽的には声楽技巧よりも直接的な感情表現に重きを置き、重厚なオーケストレーションを特徴とするオペラのことです。
村の若者トゥリッドゥが、かつての恋人ローラと、ローラの結婚相手の馬車屋のアルフィオとの三角関係から、最後はトゥリッドゥがアルフィオに決闘を申込み、逆にアルフィオに刺殺されてしまうというあらすじです。
アンソニーが主役のトゥリッドゥを演じます。
アンソニー
新人デビューなのでまだ舞台慣れしておらず、緊張もあって譜めくりがぎこちないです。
『カヴァレリア・ルスティカーナ』のアリアや間奏曲は、例えようもない美しい旋律で、心が惹きつけられます。
「カヴァレリア・ルスティカーナ」指揮カラヤン
ヴェリズモ・オペラの、感情に直接訴える生々しさは、南イタリアの情熱的な国民性を象徴しているようです。
トゥリッドゥの不安定な恋心を唄うアリアが、これから起きる惨劇を予兆しているようで、映画を観ている側も緊張が高まります。。。(汗)
2. メアリーとヴィンセントの悲愛
ヴィンセントは、マイケルの後継者として正式にポストを継承する条件として、マイケルの愛娘のメアリーを諦めるように言われ、メアリーへの愛情を抑えてその条件を呑みます。オペラが開演する直前に、ヴィンセントはメアリーに別れを告げます。
唐突に別れを切り出された無垢なメアリーは、絶望のどん底に突き落とされます。
マイケルの娘のメアリーを演じたのは、フランシス・フォード・コッポラ監督の実の娘のソフィア・コッポラです。
ソフィア・コッポラは、当時は新人にも関わらずコネで役柄を得たこともあり、『ゴッドファーザー PART III』の世間の不評のスケープゴートにされてしまいました。
ソフィア・コッポラの演技に批判的な意見は非常に多いのですが、個人的には、父親想いでヴィンセントに愛を捧げる純朴な女性を好演していると評価しています。
ヴィンセントは、自分にはない無垢な心を持つメアリーを真剣に愛してしまったのですが、自分がマフィアのドンになった以上、メアリーには危険な目に遭わせたくないという気持ちから、敢えてメアリーから手を引く決心をしたのです。
観劇中に、メアリーが後ろの席にいるヴィンセントを振り返りますが、ヴィンセントは目を伏します。
いきなり別れを告げられたメアリーですが、自分のヴィンセントへの想いは揺るがないという素直な気持ちを表したのでしょう。
さらに、オペラの終盤でも、再びヴィンセントはメアリーの肩に手を置いて慰めます。
ヴィンセントの苦悩が画面を通して伝わります。
『カヴァレリア・ルスティカーナ』は、叶わぬ恋に若気の至りで命を落としてしまう悲愛の物語なので、皮肉にも、メアリーにとっては、自分と同じ境遇の物語を観ることになってしまったのです。
『ゴッドファーザー PART III』と『カヴァレリア・ルスティカーナ』は、悲劇の恋というテーマでも共通しているのです。
3. ドン・アルトベッロの毒殺
一方、マイケルの妹コニーは、実のゴッドファーザーであるドン・アルトベッロに、誕生日祝いとして毒入りカンノーリを渡します。マイケルを裏切ったドン・アルトベッロを毒殺するためです。ドン・アルトベッロは表向きは喜んでいますが、コニーに毒見をさせます。
コニーは少しかじって返します。
なぜコニーは毒にやられなかったのでしょうか?
それは、おそらく、カンノーリというお菓子にヒントがあると思います。
カンノーリをもらったドン・アルトベッロは、観劇中にずっとカンノーリをほうばっています。
カンノーリ(カンノーロとも言う)というイタリアのペストリー菓子の発祥地はシチリア島であり、シチリアの菓子の中でももっとも有名で人気の高いものの一つです。
カンノーリ(グルメノートより引用)
カンノーリはドン・アルトベッロの大好物だったに違いありません。
なので、コニーは、ドン・アルトベッロが食べ尽くすことを知っていて、カンノーリに満遍なく毒を盛り込み、少しかじった程度では毒が廻らないように用意周到に計画したのだと思います。
オペラグラスでドン・アルトベッロの様子を伺うコニー。
オペラグラス超しにドン・アルトベッロと視線が合ってしまい、思わずオペラグラスをそらすコニー。
上手い演出ですね。。。
オペラが終盤のクライマックスを迎えた頃に、毒が廻ってドン・アルトベッロが苦しみ出します。
裏切者とはいえ、自分のゴッドファーザーを自らの手で殺めるというのは、普通の神経ではとてもできないでしょう。
ドン・アルトベッロの暗殺に成功したあとのコニーの表情は、良く見ると毅然とした鬼の形相に変わっているのがわかります。
コニーはこれまでもファミリーの重要な決定に積極的に関与してきましたが、自らの手で殺人の罪を犯したのはおそらく初めてのことだったに違いありません。
実の兄を殺したマイケル、自らのゴッドファーザーを殺したコニー。
血は争えないですね、身内殺しという重罪を背負った兄と妹のペアが誕生したわけです。
4. 殺し屋モスカ
『ゴッドファーザー PART III』のオペラハウスのシーンでは、オペラの進行とともに、各地で同時多発的に殺しが進みます。
その演出は『ゴッドファーザー PART I』のラストを意識したものになっていますが、オペラの進行に連動したかのように殺しが重ねられるシーケンスは、まさに映画芸術の極致ですね。
コニーがドン・アルトベッロの毒殺を進めている一方、オペラハウスでは、神父に変奏して潜伏した殺し屋のモスカがマイケルの命を狙います。
殺し屋のモスカ
殺し屋モスカは、シチリア島モンテレプレ村に住む凄腕の殺し屋です。ドン・アルトベッロからマイケル殺害を依頼され、息子のスパラ(やはり殺し屋)とともにオペラハウスに潜り込みます。
モスカとスパラは、田舎道を歩いているときにドン・トマシーノに正体を見破られて、その場でドン・トマシーノを射殺しています。
親子で殺し屋というのがシチリアらしいです。
ドン・トマシーノ
「昔から殺し屋だ」とドン・トマシーノが言っていることからも察するに、かつてシチリアには「村人全員が殺し屋」という村があったそうです。真偽のほどは別として、シチリアはそれほど血生臭い土地柄だったということでしょうか。
PART Iでマイケルが身を潜める『コルレオーネ村』という村が出てきますが、シチリアに実在している村で、歴代の大物マフィアを輩出しているそうです。
話を映画に戻します。。
まずは一人のボディガードを血祭りにあげます。
そして、事前にスパラが持ち込んで隠しておいたライフルスコープ付きの銃を組み立てます。
マイケルを射程に収めて暗殺までもう少し。。。というところで背後にかすかな物音が。
双子のボディーガードのひとりが背後から忍び寄ります。。。
コート掛け?の影に隠れており奇襲でボディーガードと取っ組み合い、そして刺殺。
おそらく物音を聞いてもう一人の双子のボディーガードが急いで駆けつけます。
既に死んでいるボディーガードに首を絞めさせた恰好で殺されたフリをしたのは窮余の策だったのでしょうか。。。
まんまと演技に引っかかったボディーガードも至近距離から喉元にナイフを突き刺されてしまいます。
こうして双子のボディーガードは敢え無く殺られてしまいました。
その後モスカはオペラハウス内での暗殺を諦めて、観劇を終えてオペラハウスから出てきたマイケルを狙います。
注目すべきは、モスカ自身の行動で、オペラハウスの外で人込みのなかで堂々とマイケルにむけて銃を撃ったことです。
当然のように、周囲にいた神父たちに取り押さえられ、ヴィンセントに問答無用に射殺されます。
モスカは殺し屋としてはフリーだったので、依頼主であるドン・アルトベッロに対して何の恩義もないなずなのに、なぜ己の命を危険に晒してまでマイケル暗殺を強行しようとしたのでしょうか?
しかも凄腕の殺し屋であるモスカがなぜ至近距離でマイケルを殺し損ね、メアリーに銃弾が当たるほどのミスを犯したのでしょうか?
これは謎ですね。。。
息子のスパラは、父親の援護をするわけでもなく、騒ぎの場所から静かに立ち去ります。
代々の殺し屋の伝統を継ぐために。。。
ところで、ボディーガード3人と、ドン・アルトベッロが殺害されるシーンで、オペラの舞台では、信者たちが教会のミサでイエス・キリストの復活の賛美を唄っています。
今日 栄光のもと
主は よみがえられた
マフィア同士の殺し合いのシーンで、舞台ではなぜイエス復活の賛美が唄われているのでしょうか?
それは、マフィアの暴力と、カトリックの世界は、表裏一体であることを暗示しているのではないかと思います。
『ゴッドファーザー PART III』は、バチカン・スキャンダルが主題でした。
しかも、架空の物語ではなく、在位間もない突然の法王死去も、バチカンの資金管理責任者が橋の下で「首吊り死体」の姿で発見されたことも、驚くことにすべて史実なのです。
コッポラ監督は、映画を通じて、現代社会の権力構造の腐敗、そして(イタリアの)カトリック社会に蔓延する堕落を描きたかったのではないでしょうか。
5. ドン・ルケージを眼鏡で刺殺
オペラが進行している一方で、マイケルが慕うランベルト枢機卿 (教皇ヨハネ・パウロ)を葬るべく陰謀を企てるルケージ会長、カインジック頭取、ギルディ大司教の3人はそれぞれヴィンセントが仕向けた殺し屋たちによって殺害されてゆきます。カーロがドン・ルケージの私邸に丸腰で乗り込み、コルレオーネからのメッセージをドン・ルケージに伝えるために耳元に囁くや否や、ドン・ルケージのかけていた眼鏡を奪い取って首に突き刺すシーンは衝撃的でした。
この「えせ権力は身を滅ぼす!」(Power wears out those who don't have it.) というセリフは、マフィアとの癒着で悪名高いアンドレッティイタリア元首相のセリフでもあります。
暗殺は見事に成功、しかしカーロもボディガードに即座に射殺されてしまいます(映画では明確に描写していませんが)。
いくら殺し屋とはいえ、自分も100%確実に死ぬような相討ちをするものでしょうか??
カーロがドン・ルケージを殺したのは、長年の恩師ドン・トマシーノの仇討ちでした。
つまり、カーロは、自分も死ぬ覚悟でドン・ルケージの私邸に丸腰で乗り込んだわけです。
これは、イタリアマフィア版の忠臣蔵ではないでしょうか?
ドン・トマシーノの死の悲報を受けたマイケルが、カーロに「頼みたい仕事がある、難しい仕事だが。。」と伝えるシーンがあります。
これはドン・ルケージの殺害のことですが、ドン・ルケージは、政財界に君臨するトップ中のトップで、周辺の警護もマフィアのボスとは比べ物にならないほど強固だったのでしょう。
私は、自分の命と引き換えにドン・ルケージを殺害する計画は、カーロ自身の究極の決断だったのではと思います。
平和な世界にぬくぬくと安全を貪っている己の身を振り返って考えてしまいます。。。
また、カーロがとっさにドン・ルケージの眼鏡を凶器として利用したように見えますが、実は、周到な準備があったのではないでしょうか。
つまり、ドン・ルケージが普段愛用している眼鏡のフレーム端は、鋭利な金属であることを調査しており、凶器として利用し得ると判断したのでしょう。
もちろん、貧弱なメガネのフレームで確実に致命傷を与えるために、首の頸動脈をしっかり狙いを外さずに突き刺す訓練も十分に行ったのでは。。?
映画では、ドン・ルケージのデスクの上に金属製のボールペンが置いてありますが、観ている側からすると、ボールペンのほうがまだ眼鏡よりマシな凶器ではないかと思ってしまいますが、実は、そのような理由でカーロは最初から眼鏡を凶器に使うことを計画していたのではないかと思います。
余談ですが、カーロの殺人は、その後「鉛筆で瞬時に3人の男を殺した」という伝説の殺し屋『ジョン・ウィック』(2014年)や、映画以来マフィアは眼鏡をかけなくなったという都市伝説に繋がります。
6. カインジックを橋の下で「首吊り」
カインジックは、ギルディ大司教の下で、バチカン銀行のマネーロンダリングを行うアンブロシアーノ銀行頭取でした。
カインジック
大金を抱えて逃亡先に潜んでいましたが、マイケルの手下に発見されて枕で窒息死、その後橋の下に「首吊り」で晒されました。
カインジックのモデルとなったのは、ロベルト・カルヴィ(1920~1982)というイタリアのアンブロシアーノ銀行の頭取です。バチカンの資金管理を行っていたことから「教皇の銀行家」と呼ばれていました。
ロベルト・カルヴィは、大規模なマネーロンダリングが発覚してアンブロシアーノ銀行が破綻した後、イタリア国外に逃亡しましたが、1982年6月17日の未明に、ロンドンのテムズ川にかかるブラックフライアーズ橋の下で「首吊り死体」の姿で発見されました。
暗殺の真相は未だに謎ですが、マフィアもしくは政界上層部の口封じだったという説が有力です。
映画では、橋の下で「首吊り」にされたカインジックに、多くの札束が舞い降りるシーンでしたが、まさに「金まみれ」で最期を迎えました。
ロベルト・カルヴィのアンブロシアーノ銀行での闇取引は、単にバチカン銀行のスキャンダルに留まらず、その背景にはバチカンがフリーメーソンの秘密組織「P2」に操られていたというとてつもない事実が背景にあります。
フリーメーソンの秘密組織「P2」とは、フリーメーソンの過激派が独立したロッジP2(Loggia P2)のことを指します。ロベルト・カルヴィはロッジP2のメンバーでした。
ロベルト・カルヴィ(Wikiより)
驚くべきは、これらのスキャンダルに関与していたのが、当時の首相であったジュリオ・アンドレオッティや、その後首相になるシルヴィオ・ベルルスコーニなど、政界のトップ中のトップであることです。
バチカンスキャンダルの詳細については、橘玲さんの世界投資見聞録サイトがわかりやすいです。
いやはや。。。イタリアという国家の実情は、われわれの想像を遥かに超えていますね。
7. キルディ大司教を射殺
ヴァチカン公国では、そのランベルト枢機卿 が、キルディ大司教一派にコーヒーに盛られた毒で毒殺されてしまいます。マイケルたちの放った刺客も間に合いませんでした。。。
ランベルト枢機卿が死亡する前に、キルディ大司教が夜にお茶を飲もうとして躊躇するシーンがあります。
キルディ大司教
これはキルディ大司教が毒殺に関与したことを暗喩しています。
そのキルディ大司教は、あっさりとネロによってバチカン内で射殺されてしまいます。
流石のコッポラ監督も、聖職者がマフィアによってバチカン敷地内で射殺されるというショッキングな描写に関しては、あまりセンセーショナルにできなかったのではないでしょうか。
8. メアリーの死
ドン・アルトベッロ、3人のボディーガード、ランベルト枢機卿、ドン・ルケージ、カインジック、ギルディ大司教。。。もうこれだけでも殺人のオンパレード、暴力の連鎖ですね。マイケルは、ランベルト枢機卿の前で自らの罪を告白して懺悔し、もう二度と罪は犯さないと誓ったにも関わらず、です。
ランベルト枢機卿は、「神は救ってくださるが、君はそれを信じないし、改めないだろう」と言いましたが、まさにその通りになったわけです。
映画の最終局面では、殺し屋モスカがマイケルを狙った銃弾が、メアリーの胸に命中、メアリーまでもが犠牲になってしまいます。
まさかのメアリーの死は、衝撃的でした。
目の前で愛娘のメアリーを惨殺されたマイケルは、その場で絶叫して廃人化してしまいます。
神に背いて罪を重ね続けた代償は、最愛の娘を目の前で殺されることだったのです。
アル・パシーノの演技の迫力は凄まじい。。。
マイケルのせいで娘を失ったケイは悲しみ以上に、マイケルへ激しい憎悪を剥き出します。
背筋が凍るほどのダイアンキートンの鬼気迫る演技。
ケイ
コニーは悲しみに暮れて、黒いマントで顔を覆います。
コニー
これは、オペラの終盤で、トゥリッドゥが殺されてローラが黒いマントで顔を覆ったのと同じ行為ですね。
ヴィンセントもメアリーの突然の死に打ちひしがれます。普段はオールバックの髪型が乱れて愕然とした表情。
ヴィンセント
結局ヴィンセントは、最愛のメアリーの命さえ守ることさえできませんでした。
コルレオーネ全員が絶望のどん底に叩き落されたのでした。
9. マイケルの死
そして、あの有名な間奏曲が奏でられるなか、マイケルの回想でメアリー、アポロニア、そしてケイとのダンスシーンが流れます。3部作のハイライト、しかしマイケルは愛する女性を誰一人幸せにすることができませんでした。
確かに、マイケルはコルレオーネファミリーのビジネスの合法化に尽力し、最後にはそれも成就することができました。
オペラの途中で、法王が正式にインモビリアーレ社の契約裁可を認めたというメッセージが入るところです(当のマイケルも事態の急な好転に驚いています)。
つまり、マイケルはビジネスマンとしては、コルレオーネ一族の歴史のなかで最大の功績を遺すことに成功したのです。
一方、マイケルは自分の家族を結果的にすべて破滅に追い込んでしまいました。
マイケルの最晩年は廃人のようです。眼鏡をまっすぐに掛けるのも苦労しています。
そして間奏曲の終わりと共に有名なエンディングを迎えます。
壮絶な人生を生き抜いたゴッドファーザーにしては、あまりに孤独な晩年でした。
10. まとめ
この映画シリーズの最大のテーマは何だったのでしょうか?私は、それは、「イタリアンマフィアのノスタルジー」ではないかと思います。
もちろん、映画の根幹には、カトリックの贖罪という壮大なテーマがあり、マイケルは、神に救いを求めなかったため、自業自得の結果を招いたというのもあります。
話は飛びますが、私は30年前にマンハッタンに住んでいたことがあるのですが、そのとき初めて訪れたリトルイタリーの荒廃ぶりに唖然としたことを鮮明に覚えています。
隣接しているチャイナタウンに完全に浸食されていました。
リトルイタリー(OurLifeIsAJourneyより引用)
当時、ちょうどこの『ゴッドファーザー PART III』が封切りとなった直後で、そのイメージでリトルイタリーを訪れて、大きなショックを覚えました。
史実してイタリアンマフィアの歴史は語り継がれるでしょうが、やがてその記憶も薄れ、当事者も残り少なくなった現在、マフィアの歴史を最も忠実に遺すことができるのは、『ゴッドファーザー』のような映画ではないかと思うのです。
『ゴッドファーザー PART III』が、バチカンのスキャンダル史実をベースに製作されたのも、そのような意図があったからではないか。。。
シチリア島を訪問したことはありませんが、もはやかつてのマフィアが生活に根差しているような社会はなく、おそらく観光地化が進んでいるでしょう。
『ゴッドファーザー PART III』ゆかりの地訪問ツアーなんて企画もあるのかもしれません。
現代にはドン・コルレオーネの住む世界はもうありません。
コッポラ監督は、音楽や衣装といったイタリアゆかりの芸術の粋を最大限活用して、ハリウッドから遠い故郷の過ぎ去った時代を懐かしむ映画を製作しました。
『ゴッドファーザー PART III』を観たきっかけで、イタリアの文化や政治、歴史についてもっと知りたいという興味が湧いてきました。
そんななか、バチカンスキャンダルを小説化したベストセラー「P2」というものがあることを知りました。
原題は、La Muerte Del Papa (最後の法王)です。在位33日での突然の法王死去の陰謀にロンドン在住の女性記者が巻き込まれ、影の組織P2の正体が明るみに。。。というストーリーです。
以下アマゾンからの商品説明を引用します。
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在位33日での突然の法王死去。1978年9月のある朝、法王ヨハネ・パウロ一世が自室で遺体で発見されたのは紛れもない史実である。そしてそこに陰謀の存在が囁かれていたことも。その30年後、ロンドン在住の女性記者サラのもとに一通の手紙が届く。暗号、謎の人名リスト、鍵。襲撃者をかわし続けるうちに彼女が知った影の組織P2とは……。南欧発の世界的ベストセラー・ミステリー!
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上下巻の長作ですが、フィクションとノンフィクションが絶妙に融和された読み応えのある異色の小説です。
著者のルイス・ミゲル・ローシャは、2006年に本著『P2』を発表し、世界的ベストセラー作家となりましたが、小説中の場面はすべて独自に入手した情報、資料を基にして再構築したということです。
それらの情報、資料類は、法王の没後40年目の2018年9月29日に一般に公開される予定になっていたそうです。
そのルイス・ミゲル・ローシャ氏は、2018年3月に死亡しています。それも何と39歳の若さで!
ルイス・ミゲル・ローシャ(luis miguel rocha、goodreadsより引用)
果たして極秘資料が一般公開されたかどうかは不明ですが、このニュースは日本ではほとんど報道もされなかったのではないでしょうか(ローシャ氏の日本語Wikiさえありません)。。。
私はこの事実を、「ポルトガルの空の下で」という個人ブログサイトで偶然知りました。
ローシャ氏の死因は病死だそうですが、果たして本当でしょうか???
もしやドン・アルトベッロやランベルト枢機卿と同じだったとしたら。。。!!
。。。『ゴッドファーザー PART III』の闇の世界は奥深い。
『カヴァレリア・ルスティカーナ』は、ドミンゴのドラマチックな表現のシノーポリ盤(アマゾンレビュー評価4.9)がオススメです。
コッポラ監督自らによる再編集版『ゴッドファーザー(最終章):マイケル・コルレオーネの最期 [Blu-ray]』がリリースされました。
冒頭のシーンがバチカンからの融資依頼を受けるシーンに変更になっているのと、エンディングの「あのシーン」が大きく修正になっています。
再編集版は賛否両論(特にラストシーンの変更)あるようですが、オペラハウスのシーンを含めて基本的にはほとんど同じです。
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