【2019年に観た映画ベスト10】『スリー・ビルボード』『ムーンライト』『スノーデン』ほか

2019年2月~4月まで3か月間だけWOWOWに加入していました。その間に放映された映画のなかから、個人的に最も気に入ったベスト10を紹介します。

映画ベスト10

2月~4月はちょうどアカデミー賞受賞式の時期だったので、過去のアカデミー賞の作品がまとまって放映されていました。


アカデミー賞受賞作品以外にも、準新作や旧作も含めて、個人的に今回初めて観た映画のなかからベスト10を選びました。

No.1:『スリー・ビルボード』
No.2:『スプリット』
No.3:『ムーンライト』
No.4:『スノーデン』
No.5:『潜入者』
No.6:『レッド・スパロー』
No.7:『人狼ゲーム』
No.8:『シェイプ・オブ・ウォーター』
No.9:『マリアンヌ』
No.10:『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』

ちょっとアカデミー賞受賞作品に偏ってしまった感がありますが、以下各作品のレビューを記します(注意!ネタばれ満載です)。

1. スリー・ビルボード


2018年のアカデミー賞で作品賞、脚本賞、作曲賞、編集賞など6部門で計7つのノミネート(受賞は主演女優賞と助演男優賞)作品だけあって、期待通りの名作でした。

田舎町で起きたレイプ殺人事件の犠牲者の母親が、事件を解決できない地元警察官に対する不信感から、郊外のビルボード(広告板)を借りて、そこに「娘はレイプされて焼き殺された」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」というメッセージを張り出したことで、街を巻き込む騒動に発展する。。。というあらすじです。

まず、脚本と登場人物の描写が素晴らしいです。

周囲との協調を拒絶して復讐に燃える母親のミルドレッド、人格者であるがゆえに悩み苦しむウィロビー署長、独善的で暴力的な警官のディクソン、皆それぞれが正しい大義を信じるがゆえに衝突し、暴力に発展してしまう。

窓から突き落とされて入院中のレッドが、病院で(相手が自分に重症を負わせた張本人とは知らずに)オレンジジュースを差し出すシーンは、映画史に残る名場面だと思います。

最後にレイプ犯が判明しそうな流れになりますが、結局それも人違いだったという展開も。。。巷に溢れる陳腐なドラマのようなストーリー展開とは次元の違う脚本の良さが際立ちます。

一見救いようがない結末ですが、犬猿の仲であるミルドレッドとディクソンが最後はお互いに(僅かではあるが)歩み寄るシーンを観ると、「価値観のまるで違う人間同士も捨てたものじゃない」と思わせます。

人間ドラマとして本当に良く作られており、尚且つエンターテインメント性も高く、過去に観た映画のなかでも最も感銘を受けた作品の一つです。

2. スプリット



2016年、ナイト・シャマラン監督のサスペンス映画。

こちらも『スプリット』というタイトルだけでは、まったく観る気になりません。

スプリットという意味は、多重人格のことを指しており、犯人は23もの人格を持っている精神異常者です。

多重人格者を精神異常者=危険な人物とレッテルを貼り付けるのは簡単なことですが、この映画のメッセージはその反対に、多重人格者は人類の進化の結果であり、人類を次のステップに飛躍させるリーダーではないか、との問題提起をします。

23もの多重人格であるケビンの唯一の理解者であるカウンセラーのフレッチャー博士が、学会でそのような趣旨の研究成果を発表しているシーンが私には一番印象に残りました。

フレッチャー博士は結局ケビンに殺されてしまうのですが、それは読み線としてはバレバレでした。。。

私たちは普段、自分と似た性格や物の考え方をする相手に対しては安心感と信頼感を感じますが、多重人格者や、心理的に特異な性質を持った相手に対しては、警戒心と不信感、そして無意識のうちに排除したいという嫌悪感を抱いてしまいます。

しかし、精神的に健常者ではないカテゴリーの人々こそ、実は社会でのリーダーシップを発揮したり、新しい発明や発見をしたり、有事には世界を救ってきたという側面も忘れてはなりません。



精神医学教授ナシア・ガミーの『一流の狂気』という書籍では、人類の社会が平穏なときには「正常のリーダー」が活躍するが、普通でない大きな危機(ヒトラーの台頭など)に対しては、狂気の指導者(チャーチル首相など)が必要とされる、と解説しています。

リンカン、ケネディ、チャーチル、ガンディー…歴史的危機を乗り越えたリーダーたちは共通して精神疾患者だったという事実があります。

『スプリット』の多重人格者も、必ずしも厄介者という存在ではなく、我々凡人では対処できないような問題を解決する能力を秘めているのかもしれません。

尚、この『スプリット』は、『アンブレイカブル』『ミスター・ガラス』と併せてナイト・シャマラン監督の3部作のひとつになっています。

『アンブレイカブル』も、ブルース・ウィリス(不死身の身体)とサミュエル・L・ジャクソン(ガラスのように脆いが予知能力を持つ)が演じる、常人にはない能力を持つ人間同士の傑作です。

3. ムーンライト



ズバリ、LGBTの映画です。LGBTに否定的もしくは生理的にダメは人は観ないほうが良いでしょう。

こんな題材の映画がアカデミー賞(作品賞、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚色賞)を受賞してしまうとは、米国の映画界の懐の深さを感じます。

学校ではいじめに遭い、友人はコカインの売人、母親は麻薬ジャンキーで売春婦という、想像を絶する世界での、ゲイに目覚めた青年の人生を、ほろ苦いタッチで描く青春映画(?)です。

主人公に感情移入できるかというと、こんなに生まれ育った境遇が違うので、それは無理というもの。

しかし、主人公の心情や行動には、激しく共感させられてしまい、それが映画の感動に繋がります。

非常にエモーショナルな映画だと思います。

大人になって再会を果たした二人、風貌も仕事も何もかもがすべて豹変して、かつての面影などどこにも存在しないのですが、二人のあの夏の出来事とその感情だけは、何十年の歳月にも関わらず、今もまるで昨日のことのように鮮烈に想い出に焼き付いている(そしてそれが故に人生の軌道修正ができなかった)のでしょう。

映画タイトルのムーンライトというのは、エンディングシーンで主人公の青年時代にビーチで遊んでいる月夜のシーンに由来しています。

人生いろいろ苦難があっても、決して忘れることのできない輝いた瞬間が誰にでもある、主人公にとっては、それは自分がゲイとして相手に目覚めさせられた瞬間でした。

。。。まあとにかく、この映画は単一民族でLGBTなど亜流は一切無視される日本では決して幅広く受け入れられることはないだろうと思います。

マイノリティを主題にしたという点で共通点がある、日本映画「万引き家族」(第71回カンヌ国際映画祭において最高賞であるパルム・ドールを獲得)が日本以上に海外で受ける理由がよくわかります。

4. スノーデン



2013年に発覚して世界を揺るがす一大スキャンダルとなった「スノーデン事件」を忠実にドラマ化したものです。

スノーデン事件とは、元CIA職員のエドワード・スノーデンが、米国家安全保障局(NSA)が米電話会社の通話記録を収集したり、マイクロソフトやグーグル、フェイスブックといった大手IT企業も国家ぐるみの個人情報収集に協力していた事実を暴露した事件です。

日本を含む世界38の大使館や代表部、メルケル独首相、欧州連合や国連本部までもが盗聴・監視の対象だったことも発覚、当時のオバマ大統領が、事態の収拾を図りつつも、「どの国の政府も裏ではやっている」と開き直ったことでも有名になりました。

6年前の事件なので、記憶が薄れてしまっていたのですが、この映画を観ると、トランプ大統領の「ファーウェイ外し」などは、実は米国も大々的にやっていることをよくもまあと呆れてしまいます。

映画は2015年12月に米国で公開されました(日本公開は2016年)。残念ながらアカデミー賞の受賞はなりませんでしたが、同時期に制作されたスノーデン事件の長編ドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞しています。

社会派ドラマをやらせたら右に出るものはいないあのオリバー・ストーン監督(代表作は『プラトーン』『7月4日に生まれて』『ウォール街』『JFK』『ニクソン』。。。挙げればきりがない)の作品だけあって、重厚かつ隙のない作品です。

国家レベルのスキャンダルや恥部を映画にしてさらけ出すというのは、米国のお家芸なのでしょうか。70年代のウォーターゲート事件をドラマ化した『大統領の陰謀』をはじめ、米国の失政や汚職などはことごとく映画化されてきました。

それに対して、日本の政治や国家レベルの不祥事(ロッキード事件やリクルート事件など)は果たして今まで映画化されたことはほとんどない(というか皆無)ではないでしょうか??

米国の映画産業の強さは、このような関係者多数が在職や存命中のたった数年前の事件でさえ、映画化して国民の前にさらけ出してしまうという点です。

民主党支持者の多いハリウッドが、スノーデン事件(当時はオバマ民主党政権)を取り上げるのですから、どこかの国の政党寄りのメディアとは覚悟が違いますね。

映画の内容も、ドキュメンタリーと同じ史実に忠実に描いているにも関わらず、観ていて全く飽きさせないダイナミックな展開となっているのは、スノーデン自身の「愛国心」に焦点を当てているからではないでしょうか。

派手なアクションもなし、有名俳優もゼロ。

スノーデンを演じた当時ほぼ無名の俳優ゴードン=レヴィットは、技術と民主主義の関係についての「対話を促進するのを助ける」ために出演料を全額寄付することを約束したそうです(Wikiより)。

米国の映画業界は凄すぎる。。。

香港の学生が自由を求めて中国政府に対して反対デモを繰り返していますが、所詮、西側の国家体制にも個人の自由やプライバシーなど何の保証もないのではと、この映画を観てしまうと感じます。

5. 潜入者



2016年の映画です。

「潜入者」という何の魅力も感じない映画タイトルで、この映画を観ようと思う人は少ないでしょう。でもこの作品は観て絶対損はないです。

麻薬潜入捜査官ロバート・メイザーの回顧録をベースにした事実に基づく犯罪映画の傑作です。

正体が知られれば自分ばかりか家族も無残に殺されるリスクを負って、それでも国家のために使命を尽くすというのは、個人的には(そしておそらくほとんどの日本人にとっても)想像もできない世界観です。

メデジン・カルテルに潜入した捜査官が、マフィアとあまりにも生活を共にして親密な交際を続けた結果、マフィアの人情深さに感情移入してしまいそうになるくだりは、なかなかグッとくるものがあります。

最後に裏切られたマフィア側が潜入捜査官を睨み付けている凄み(家族もろとも必ず復讐してやるという)も迫力がありました。

実在のロバート・メイザーは、マフィアに復讐されないように、名前も何もかも変えてカナダ(だったか)に移住して、家族と平和に過ごしているそうです。

これまでにも、捜査官を主人公にしたマフィア映画の名作はありました。

ジョニー・デップとアル・パチーノが共演した『フェイク』は正統派の名作でした。

フェイク

狂暴なマフィアのニッキー役を演じたブルーノ・カービーの印象があまりに強烈過ぎて、すっかり主役の二人を食ってしまいましたが(笑)

潜入捜査官のドニー(ジョニー・デップ)が、マフィアと一緒に日本の料亭に行き、そこで(録音機を隠している)ブーツ靴を脱がなければならなくなり、太平洋戦争で戦死した父のせいで孤児になったと、何の罪もない日本人店員をボコボコに殴る蹴るの暴行を加えるシーンがあります。

これは、『潜入者』でも非常に似たシーンがあります。

マフィアには「婚約者がいる」と言っておいて、自分の妻との結婚記念日にレストランでマフィアと鉢合わせしてしまい、レストランの店員が、「妻との結婚記念日」とプレートの乗ったケーキを持ってきて、「こんなものを注文したんではない!」と、その何の罪もない店員の首を掴んでケーキのなかに顔を突っ込ませるシーンです。

異色なところでは、タランティーノ監督の初期の名作『レザボア・ドッグス』が強烈に印象に残っています。

レザボア・ドッグス

バイオレンス盛沢山の血しぶきが噴き出しまくる残酷な映画なので、万人にはおススメできませんが。。。

詳しくは、「極限の緊張感がたまらない潜入捜査映画10選」を参照ください。

6. レッド・スパロー



これは典型的なハリウッドの大衆娯楽スパイ映画です。ミッションインポッシブルや007と同じ系統です。

主人公のロシアの美貌バレリーナをジェニファー・ローレンスが演じています。

ジェニファー・ローレンスは、映画の主人公さながら、美貌と才能を兼ね備えた現在最も人気の女優の一人です。アカデミー主演女優賞にもノミネートされたことのある実力派です。

最近では、「パッセンジャー」という、宇宙船のなかでのパニック映画(というか甘ったるいだけの美男美女のロマンス映画)に出演していました。


そのジェニファー・ローレンスが、本作では、肉体を武器にした女性スパイをまさに体当たりで演技しているのです。

観終わった感想「この女優根性には参りました」。。。

モンスターのシャーリーズ・セロンにも決してひけを取らない怖ろしいほどのプロ根性。

ハリウッドの凡作にありがちな過度なアクションシーン(CGバリバリのカーチェイスや爆発シーン、結果が見えてる格闘シーンなど)が排除されており、ラストシーンも含めて終始抑え気味の演出に好感が持てました。

ラストで手を差し伸べた叔父にパンチを食らわせるシーンだけは、折角のストーリーに凡庸さを加えてしまい蛇足でしたが。

しかし、このジェニファー・ローレンスを観るだけでも、この映画は価値があります。

国家訓練所の監督官にシャーロット・ランプリングが出ているのは、『愛の嵐』を知っている世代には大ボーナス、涙モノです。

7. 人狼ゲーム



私は若いタレントが出演している日本映画にはほとんど興味がないのですが、この映画は特例中の特例です。

低予算のB級映画の面白さ満載!!

こんな面白い日本映画があるとは、人生まだまだ捨てたものではありません。

この人狼ゲーム映画、2013年の本作から、シリーズ化されており、今では8作もリリースされています。

WOWOWでは、人狼ゲーム特集をやっていて、私は8作すべて観てしまいました(^^♪
  1. 人狼ゲーム (2013)
  2. 人狼ゲーム ビーストサイド (2014)
  3. 人狼ゲーム ラヴァーズ (2017)
  4. 人狼ゲーム ロストエデン (2018)
  5. 人狼ゲーム インフェルノ (2018)
  6. 人狼ゲーム プリズン・ブレイク (2016)
  7. 人狼ゲーム マッドランド (2017)
  8. 人狼ゲーム クレイジーフォックス (2015)



高校生が命をかけて戦う人狼ゲーム、命をかけてというより、殺し合いをします。

なぜなら、相手を殺してゲームに勝たないと、生き残って監禁されている施設から出れないからです。

人狼ゲームとは何か?

ゲーム参加者(普通は6~8人)が、村人陣営と人狼陣営の2つに分かれて、それぞれの陣営の勝利を目指して戦うロールプレイング型の対話ゲームです。

村人陣営は、人狼陣営(通常二人)をすべて殺すと勝利。人狼陣営は、村人陣営を残り二人まで殺すと勝利です。

誰がどの役割を担っているかは、本人以外には明かされないので、誰もが疑心暗鬼のまま、相手を信頼したり裏切られたりしてゲームが進みます。

良く中高生が、トランプのカードや最近だとスマホのアプリを使って遊んでいます。

もちろん、現実の世界では、相手を殺すのではなく、殺されたことになったメンバーはゲームから離脱するだけですが。

この映画は、それが、強制的に相手を殺さないといけないので、超コワーイ展開となります(ゲーム参加自体を拒否すると、首に埋められたチップが頸動脈を貫き死に至る)。

シリーズの後半になると、警察やゲームの首謀者なんかもチラチラ出てきますが、基本は、監禁された密室での高校生男女のストーリーがほぼ全てなので、その緊迫感はスゴイものがあります。

密室での人間同士の疑心暗鬼といえば、ジョン・カーペンター監督のSF金字塔『遊星からの物体X』があります。

『遊星からの物体X』が人間対(人間に乗り移った)エイリアンなのに対して、『人狼ゲーム』は、人間対人間なのがリアルです。

『人狼ゲーム』シリーズについては「映画「人狼ゲーム」シリーズ全作品感想とおすすめの観る順番を紹介」の記事を参照ください。

個人的には、この第1作と、第5作『人狼ゲーム インフェルノ』(劇場版)の出来が特に優れていると思います(一般的には第2作『人狼ゲーム ビーストサイド』が最高傑作との声が多い)。

米国のサイコスリラー映画で『ソウ』という傑作があって、あちらもシリーズ化(8作)しましたが、この『人狼ゲーム』シリーズの特徴は、主人公や登場人物が毎回ほとんど刷新なんですね。『ソウ』と『人狼ゲーム』は似たジャンルの映画ですね。

日本映画にも良いものがまだまだたくさんあるのですね!

8. シェイプ・オブ・ウォーター



2017年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の4つを受賞。同じく2017年のヴェネツィア国際映画祭で最高の金獅子賞を受賞した、まさに「面白くないはずがない」作品です。

発話障害を持つ孤独な女性と、アマゾンの奥地で生け捕りにされた半魚人の淡いラブストーリーを描いたファンタジーです。

この作品で監督賞と作品賞を受賞した監督のギレルモ・デル・トロは、『ホビット』シリーズが有名ですが、ファンタジー映画の隠れた名作『パンズ・ラビリンス』は私の個人的にはギレルモ・デル・トロのベスト作品です。

なので、本作も同じファンタジー映画として、観た後は幸せな気分になれること間違いなし。

史実に基づいた映画や、社会を鋭く批判した映画ももちろん良いのですが、空想の世界ならではのファンタジーは、映画しか具現化することができない貴重なジャンルだと思います。

ファンタジー映画といえば、テリー・ギリアム監督(『未来世紀ブラジル』『フィッシャー・キング』)が描く、愉快と恐怖が奇妙に同居する世界観が個人的には好みです。

また、『シェイプ・オブ・ウォーター』は、舞台が1960年代のアメリカの古びた映画館なので、私の世代では、観ているとノスタルジーに浸ることができます。

9. マリアンヌ



ロバート・ゼメキス監督(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『フォレスト・ガンプ/一期一会』)の2016年の作品、出演はブラッド・ピットとマリオン・コティヤールです。

2017年の国内興行ランキングではトップ100にも入っていないので、ほとんど注目されなかった作品のようです(米国では初登場4位とそれなりにヒットしたようです)。

正統派のスパイサスペンスにロマンスもたっぷり、衣装も豪華絢爛で素晴らしいし、迫力の戦闘シーンや銃撃シーンもあるので、いろいろイイトコ取り的な仕上がりになっています。

自宅でリラックスして鑑賞できる最高のエンターテインメント映画ですね。

カップルで映画館で観るには理想的な作品だと思うのですが、こんな美男美女のスパイ夫婦なんて見てしまうと、現実の凡庸な相手に嫌気がさしてしまうかもしれません(笑)

「愛はすべての生涯を乗り越える」という普遍的なテーマなので、私のような天邪鬼にはちょっと時代遅れかと思ってしまいますが、それを差し引いても完成度の高い良くできた映画です。

10. IT/イット “それ”が見えたら、終わり



この作品をベスト10に入れるのは悩みました。

というのは、原作は、スティーブン・キングの大傑作「IT」で、映画は1990年のミニテレビシリーズのリメイクということもあり、個人的には期待があまりに高かった分、作品の出来には正直がっかりしたからです。

北米での興行収入は3億2,748万ドルで、これは、M・ナイト・シャマラン監督のホラー映画No.1の大ヒットを記録した『シックス・センス』が稼いだ2億9,350万ドルを上回り、事実上のホラー映画No.1の大ヒットを記録しました(Wikiより)。

世間的には大ヒットなのですが、どうしても最新技術を駆使して生成されたピエロが、金属性の鋭い牙を剥き出しにこれでもかと迫ってきても、大した恐怖心が沸きませんでした。

水野美紀が演じた日本映画の「口裂け女」(2007年)のほうが余程恐ろしい映画でした。

原作のITの素晴らしさは、幼少時代に子供の連続殺人の犯人であるIT(ピエロの形をした実在しない空想の産物)を、かつての街の仲間が30年振りに集まって退治しに出かけるという壮大な冒険ドラマである点なのですが、この映画は、ITを繰り返し画面に登場させることによって、単なる連続殺人鬼 vs. 幼馴染グループの戦いに平面化してしまった点にあると思います。

スティーブン・キングの名作『スタンド・バイ・ミー』が、少年が大人の世界への冒険へ繰り出すのに対して、この『IT』は、大人が少年時代の(自己の内面に潜む)恐怖にケリをつけるために過去に向かって冒険に繰り出す(そして命を落とす仲間もいる)という逆の話なのです。

1990年のミニテレビシリーズのほうは、SFXもなければ何もない時代なので、ピエロはほとんど出てきません。低予算作品だったので、エンターテインメント性は薄かったのですが、底なしの恐怖心は記憶に残りました。

いろいろな予備知識なしで観たらもっと楽しめたのでは。。。と思います。


以上、2019年にWOWOWで観た映画ベスト10でした。

撮り貯めていた映画を片っ端からブルーレイにコピーして、観ていない映画はまだまだたくさんあります。

撮り貯めた映画

これから秋の夜長にゆっくりと鑑賞したいと思います。

コメント