映画『モンスター』:シャーリーズ・セロンが空前絶後の凄まじい演技を見せる問題作

映画『モンスター』は、実在した殺人鬼をシャーリーズ・セロンが壮絶な演技で見せる問題作です。



非情な殺人犯が主人公という点では「ノーカントリー」と共通しているかもしれませんが、こちらは実話の映画化です。シャーリーズ・セロンは、本来はモデル出身の美人女優ですが、この役のために14kgも増量し、眉毛をすべて抜いたそうです(この役で2004年アカデミー主演女優賞を受賞)。ロバート・デニーロがレイジングブルの役のために27kg増量したという逸話がありますが、それに劣らず強烈なプロ意識で頭が下がります。

シャーリーズ・セロン(左は映画、右は素顔)

パッケージ写真を見ると、「私は本当はこんな人生を歩みたくなかった」という悲痛な叫びが聞こえてきそうですが、映画で繰り広げられる元娼婦の連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスの極悪非道ぶりは半端ではありません。

1年間で6人の男性を殺害。特に、ヒッチハイクに親切に乗せてくれた初老の紳士を、身元がバレたという理由だけで射殺するシーン(実話ではない)が、最期に主人公のアイリーンが極刑に処されるところで観客が感情的に納得する伏線になっています。

普段の生活では無意識に目をそらす対象である、社会の底辺でもがく最下層の人々。生まれも育ちも恵まれず、本人が望まない形で娼婦として生計を立てるしか選択肢のない生活。我々が普段避けて通っている社会の恥部をこの映画は露骨にさらけ出してしまいます。

世間では「恵まれない人のためにカンパを」とか、TVではタレントが(かなり偽善的な)チャリティ番組に出て、愛とか絆とか訴えていますが、現実はそんな軟弱なものでは済まされない、凄まじいまでの壮絶な世界だという事実をこの映画は目の前に突き付けてきます。

シャーリーズ・セロンの実生活も凄まじい。15歳の頃、晩に酔って帰ってきた父親に暴力を振るわれ、娘の命の危険を感じた母親が父親を射殺したのを目前で見てしまったそうです。単なる美人のモデル出身の女優ではないのですね、ここらへんがアメリカ映画界の底知れぬ深さだと思います(そんな土壌は日本にはないでしょう)。

『モンスター』は、私が(2000年以降)観た映画のベスト10のひとつです。

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