映画『デューン/砂の惑星』:SF映画史上に燦然と輝く賛否両論渦巻く超大作

デヴィッド・リンチ監督の「デューン/砂の惑星」は、興行収入的には大失敗となりましたが、後世に残るSF史上に輝く超大作でもあります。


「デューン/砂の惑星」

ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『デューン/砂の惑星』のレビューはこちらです。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』:ヴィルヌーブ監督の映像美でリメイクされ、新しく蘇った『デューン』の世界


SFファンであれば有名な、あのフランク・ハーバートのSF小説『デューン』が原作です。そのあまりにマニアックでグロテスクな描写のせいで、興業的には大失敗、良くも悪くもデヴィッド・リンチ監督の名前を後世まで残すこととなった曰くつきの作品です。

SF映画といえば、当時は「スターウォーズ」「2001年宇宙の旅」「エイリアン」といった不滅の名作が人気のなか、「デューン/砂の惑星」は、特撮効果もショボく、胃にもたれるかのような生理的に不快なダークファンタジーになってしまったのが失敗の原因と言われています。

しかし、当時の不評にも関わらず、コアなファンはこの作品を高く評価しています(私もそのひとり)。

ではこの映画の魅力はどこにあるのでしょうか?

映画はまず、無数の星がまばたく宇宙空間に、イルーラン姫(皇帝の娘)の均整の取れた顔がフェードインしてきて、物語の背景を語るところから始まります。ブライアン・イーノが手掛けた幻想的なテーマ曲がバックに流れます。

「デューン/砂の惑星」のオープニング

このオープニングでデヴィッド・リンチワールドにどっぷりと浸ってしまいます。。。

他の作品にも共通するのですが、デヴィッド・リンチは映画の冒頭の描写が天才的にうまいのです。

その後は、一般的な聴衆の期待をことごとく裏切りまくるグロテスクかつ悪趣味な描写が次々と繰り出されます。。。正直子供たちには観せたくないシーンのオンパレード。。。

そんななか、主人公のポール・アトレイデスを演じたカイル・マクラクランは、ルックスも見栄えがして素晴らしい存在感です。彼が父の復讐を誓いフレミン族の救世主として成長していくところがこの映画の最大の見どころです。

"Father! One day the sleeper will awaken."

と夜空に向かって叫ぶシーンは感動的です。すべての人にはその潜在能力を発揮するポテンシャルを持っている、というのは普遍のテーマですね。

しかし改めてこの映画のキャストが物凄い。。。

ポールの父アトレイディス公爵は「Uボート」船長のユルゲン・プロホノフ


カインズ博士は「エクソシスト」他で大名優のマックス・フォン・シドー


ヒロイン役のチャニは「ブレード・ランナー」のショーン・ヤング


公爵の副官ハレックは、「スター・トレック」シリーズのピカード船長のパトリック・スチュワート


そして、ハルコネン男爵の甥フェイドを演じるのは、あのスティング(引き締まった肉体美を披露)


ほかにも名脇役がゾロゾロ。。。

ちなみに音楽はTOTOが手掛けています(オープニングタイトルだけブライアン・イーノ)。スティーブ・ルカサーの泣きのギターがカッコイイです。

個人的にはTOTOの演奏するエンドクレジットが特に気に入っています。


映画のCGは大したことないのですが、視覚面ではゴシック調の装飾がこれでもかとばかりに強調された美術は圧倒的な迫力があります。ハリウッドのCGバリバリで無機質な映像に見慣れた眼には新鮮に映ります。

私が最初にこの映画を観たのは、大学入学して間もない頃だったと思います。フランク・ハーバートの原作(ハヤカワSF文庫で4巻の大作)は既に読んだことがあったので、映画のストーリーは知っていましたが、この映画の魅力の原点はやはり原作にあると思います。

時代は10,191年(!)の未来、砂の惑星デューンでしか採掘できないスパイス(香料)の影響を4,000年に渡って受け完全に変態化した航空士(瞬間移動ができる)、ハルコネン家とアトレイディズ家の確執など圧倒的なスケールの広い物語がこの映画に深みを与えていると思います。

原作のファンにはこの映画化は評判が悪いそうですが、個人的にはあの壮大なSF叙事詩をよくぞここまで映像化したものだと思います。

さて、その「デューン/砂の惑星」のパッケージソフトですが、8月にようやく待望のブルーレイが発売されるようです。が、Amazonの予約販売の値段を見てビックリ!30周年記念の特別版のブルーレイBOXが6,233円もの高値では手が出ません。。。

ちなみに米国Amazonでは同じブルーレイ(ただし日本語字幕はありません)がたったの$7.99で売っています。DVD版と比較すると画質も音声も劇的に向上して感激しました。

まず、皇帝が登場する宮殿内の息を呑むような豪華なセッティングが、ブルーレイだと見事に再現されて驚きます。装飾の細部まで拘ったセットに圧倒されます。

音声はDTS MA6.1chでこちらも相当な改善で嬉しい限りです。

また、DVDではカットされていた一部のシーンが新たに加わっています。ハルコネンがモノレールのような乗り物から降りて登場するシーンなどです。

ただいつも思うのですが、BD-Liveは邪魔以外の何物でもありません。。。本編視聴する前にネット接続され、不要な宣伝がジャンジャン、いつまで経っても本編始まりません。そのたびにリモコン操作を強要されるという。。。さすがハリウッドですね(笑)

DVD版のほうは、以前から数種類がリリースされています。

デューン 砂の惑星 [HDリマスター版] DVD

このHDリマスター版の画質はなかなか良いです。字幕も16:9の画面に埋め込まれているのでワイド画面の恩恵を受けて観ることができます。音質もサラウンドが入っています。

デューン/砂の惑星 TV放映長尺版 DVD

こちらのDVDは、画質的には上記HDリマスターに劣りますが、劇場未公開の貴重なTV放映長尺版が収められています。日本語版も入っていますがオリジナルの英語版も選択できます。冒頭の背景説明が紙芝居なのが笑えます。長尺版は一部貴重なシーン(ポールはフレミンに捕えられた直後、部族代表との決闘に勝ってリーダーの座に迎えられる)があるものの、全体的には冗長で、私は劇場公開版の短いバージョンで良いのではないかと思います。

(2021年10月16日 追記)
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督の『デューン/砂の惑星』のレビューを投稿しました。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』:ヴィルヌーブ監督の映像美でリメイクされ、新しく蘇った『デューン』の世界

 
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