【テイラー・スウィフト】『1989』と『Reputation』はポップスの枠を超えた壮大なコンセプトアルバム

最近テイラー・スウィフトを良く聴いています。

一昨年にリリースされた新作『Reputation』と、その前の『1989』の2枚のアルバムを聴いているのですが、セットで聴くうちに、単なるポピュラー音楽を超えた、近年稀に見る傑作ではないかと思うようになりました。

『1989』が大ヒットしたシングル曲「Shake It Off」に象徴されるように、テイラースウィフトの「陽」の部分で、『Reputation』は、彼女の「陰」を表現しており、2枚のアルバムは対のような関係になっています。

50の年齢を超えて、今さらテイラー・スウィフトにハマるとは思いもよりませんでしたが、個人的には自分の音楽性嗜好の変化のきっかけにもなったので、ブログに書くことにしました。

1. テイラー・スウィフト

テイラー・スウィフトは今さら説明するまでもなく、米国のシンガーソングライターのスーパースターです。

これまでアルバム6枚をリリースして、過去4枚連続で、1週間の売り上げが100万越えという、(アルバムが売れない時代にも拘わらず)ニールセンが1991年に統計を開始して以来、テイラーのみが達成しているというまさにモンスター級の人気アーティストです。

また『グラミー賞』10回受賞、最優秀アルバム賞を史上最年少で獲得したことでも知られています。

最近では、米タイム誌が選ぶ2019年「世界で最も影響力のある100人」のひとりに選ばれました。


カントリーシンガーソングライターというキャリアからスタートして、ポップス界の歌姫にまで登り詰めたそのサクセスストーリーは華麗そのものです。

2. 『1989』

彼女の5枚目のアルバム『1989』は、2015年1月にリリースされました。

『1989』

世界中で大ヒットを記録し、2015年全米において最も売れたアルバムであるのみならず、2000年以降にデビューしたアーティストとしては最高の全米アルバム総売上記録を達成するなで、数々の歴代売上記録を樹立、名実ともに音楽界のスーパースターとしての地位を確立したまさに絶頂期のアルバムです。

アルバム1曲目の「ウェルカム・トゥ・ニューヨーク」からいきなり超明るいノリノリの曲がその後もオンバレード、全体を通してほとんどがメジャー音調で、捨て曲ナシです。

本作からのシングルの内、リード・シングル「シェイク・イット・オフ」を含め3つのシングルがBillboard Hot 100にて首位を獲得しました。

「シェイク・イット・オフ」のキャッチ―なメロディは、誰でもどこかで一度は聴いたことがあると思います。

シェイク・イット・オフ

ちなみにこの曲のPVの再生回数はYouTubeで27億回。。。凄まじいばかりの人気です。

「シェイク・イット・オフ」は、ユニバーサルスタジオジャパンの人気アトラクションであるハリドリことハリウッド・ドリーム・ザ・ライドにも採用されています。


このハリドリというジェットコースター、個人的にはUSJでのイチオシ、大人が乗ってもなかなか楽しいですよ!

このアルバムの私のお気に入りは、この「シェイク・イット・オフ」以外にも、「バッド・ブラッド」、そして「オール・ユー・ハッド・トゥ・ドゥ・ワズ・ステイ」です。

「バッド・ブラッド」は、シングルリリースではないですが、「ヘイ!!」という掛け声が挿入されるこれまた脳天気なノリノリの曲です。

バッド・ブラッド

こちらのPVも再生回数12億回!!製作も超豪華で、ハリウッドの大作並みの資金がつぎ込まれていると思われます。

この全てを圧倒する世界観は、もはや芸術のレベル。。。

「オール・ユー・ハッド・トゥ・ドゥ・ワズ・ステイ」は、途中で挿入されるStay!という叫び声が印象的なナンバー。

オール・ユー・ハッド・トゥ・ドゥ・ワズ・ステイ

個人的には、サビの部分が同世代のリアーナの「アンブレラ」を強く連想させるのですが、ネットで検索する限り同じような意見は見つかりませんでした。。。

リアーナの「アンブレラ」

うーーん、でもこうして聴き比べるとソックリでは??

ちなみにリリース時期は、リアーナの「アンブレラ」が2009年なので、「アンブレラ」の方が先になります。

まあ、細かいことは気にしないということで。。。!

とにかく、この『1989』は、通して聴くと、元気が出るどころか、完全に脳天気なハッピーな気分になれる最高のアルバムです。

3. 『Reputation』

彼女の6枚目のアルバム『Reputation』は、2017年11月にリリースされました。

『Reputation』

前作『1989』と同様、世界中で大ヒットを記録し、初週で112万枚を売り上げ、Billboard 200で初登場1位を獲得、世界中で450万枚の売り上げを記録し、11月発売にも関わらず、2017年の世界で2番目に売れ行きのあるアルバムとなりました(1位はエド・シーランの「÷(ディバイド)」)。

2018年にはBillboard年間アルバムチャートにて年間1位を獲得しました。

前作でスーパースターとしての地位を確立し、27歳になった彼女は、このアルバムで野心的な変革に挑戦しています。

今までのノリノリ路線から一転、物議を醸すようなテーマを意欲的に取り上げ、これまでのテイラースウィフトの優等生的なイメージを自ら否定したのです。

アルバム1曲目の「...レディー・フォー・イット」は、冒頭から重低音がズシンと響き、只事ではない雰囲気が伝わります。

...レディー・フォー・イット

2曲目の「エンド・ゲーム」から、「I Did Something Bad」「ドント・ブレイム・ミー」「デリケート」そして6曲目までの「ルック・ホワット・ユー・メード・ミー・ドゥー」まで、怒涛の傑作スコアが続きます。

どの曲も、『1989』の能天気な明るい調子とは対照的な、挑発的で批判的、そしてパワーを秘めたダークな世界観で溢れています。曲調も『1989』と対照的にほとんどがマイナー調です。

アルバムの1曲目から6曲目まで、信じ難いレベルの完成度の高さと、極上のエンターテインメント体験を味わうことができます。本当にこのアルバムの前半は、何度聴いても唸らされます。

本作からのリード・シングル「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」は、PVを観ると、マイケルジャクソンの大傑作「スリラー」を多分に意識しています。まあこのPVも再生回数10億回を超えているので、その点ではマイケル・ジャクソンをとっくに超えているのですが。。。

ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ

「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」の歌詞のなかで、「古いテイラースウィフトはただ今電話に出ることができません、なぜっかって?それは。。。もう死んだから!」というセリフがありますが、このアルバムを象徴しています。

「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ」も大傑作なのですが、個人的には、その前の「デリケート」がこのアルバムのハイライトだと思っています。

デリケート

「評判が地に堕ちた今の自分こそあなたに好きになってほしい」

とスーパースターならではの孤独な心情を吐露するバラードですが、途中にたびたび挿入される「Delicate」という赤ん坊のような合成音が印象的です。

この「Delicate」は、前作『1989』の「Stay!」にも通じるものがあります。

アルバム全編に渡って、このような徹底的に計算し尽くされたアレンジが行き届いており、相当量の時間と労力をかけてこのアルバムが製作されたことがわかります。

アルバム全体がテクノ調で統一されていることもあり、テイラー・スウィフトのルーツであるカントリーミュージックの素朴さはここには全く存在しません。

アルバムの後半には、「ゴージャス」、「ダンシング・ウィズ・アワ・ハンズ・タイド」など良い曲もありますが、前半があまりにもエネルギー密度が濃い曲続きだったので、凡作のように聴こえるものも散見されます。

『Reputation』には、「シェイク・イット・オフ」の二番煎じのようなヒット狙いの商業シングルは全く含まれていません。

ただし、「ゲッタウェイ・カー」は、『1989』からのシングル「ブランク・スペース」と曲調から展開までソックリ。。。まあ細かい事は気にしないということで!

大成功した過去をスッパリと切り捨て、次のステージにリスクを負ってでも道を切り拓くという姿勢こそが、テイラー・スウィフト(および米国音楽業界)の底力であり、クリエイティブな音楽制作の源です。

『Reputation』のアルバムとしての評価は賛否両論あるのも事実ですが、個人的には、このアルバムこそ彼女の最高傑作であると思います。

4. テイラー・スウィフトの才能

テイラー・スウィフトのアルバムを聴く前は、背の高いブロンドの美人で、優等生的・健全なイメージのアメリカンアイドルという先入観でした。

しかし、『1989』と『Reputation』を聴き込むうちに、テイラー・スウィフトはアイドルというより、恐るべき才能と明晰な頭脳、そして時代を引き寄せるだけの強運にも恵まれた類まれなアーティストだと確信しました。

なぜか?

それは、『1989』での歴史に残る偉業を達成したにも関わらず、次作『Reputation』でそのスタイルを完全に捨て去って、全く別の音楽性を表現したばかりでなく、『1989』と『Reputation』というリリース時期の異なる2枚のアルバムが有機的に繋げて、ストーリーを持つ芸術作品として完成させているからです。

あれほど売れに売れまくった『1989』と似たスタイルを新作でも無難に踏襲するか、更に磨きをかけるのが普通の考え方です。

それを、過去の作品の世界観を自ら敢えて否定するだけでなく、過去と現在の対比が新たな価値を創造するように実に周到に計算されているのです。

これは単なるヒットチャートを賑わすシングルでもなければ、単一アルバムの高い完成度でもありません。

平たく言ってしまえば、テイラー・スウィフトの「陽」を表現した『1989』と、「陰」を表現した『Reputation』の2枚のアルバムは、2枚組セットでコンセプトアルバムのように聴くことができるのです。

それは、ビートルズの「ホワイトアルバム」や、ガンズ&ローゼズの「ユーズ・ユア・イリュージョン」といった、壮大なテーマの2枚組アルバムに通じるものがあります。

『1989』リリース後、2年10か月を経てリリースされた『Reputation』で、20代の女性の心境の変化や精神的な成長を、アルバムとして見事に昇華しているのです!

テイラー・スウィフト恐るべし。。。!

同世代のライバルであるアリアナ・グランデは、どうしてもローティーン向け恋愛ポップス御用達というイメージがあります。


アリアナ・グランデ(wikiより)

また、リアーナは、色気や妖艶さをモロに全面に打ち出し、パワフルな歌唱力を武器に、かつてのブリトニー・スピアーズやマライア・キャリーの成熟期を彷彿とさせます。


リアーナ(wikiより)

アリアナ・グランデもリアーナも、超スーパースターですが、それをさまざま点で超えているテイラー・スウィフトは凄過ぎです。

こんなアーティストを生み出した米国音楽市場にも驚嘆します。

現在の米国の音楽市場はもはやヒップホップ全盛で、かつての音楽の多様性は失われてしまったという悲観論もありますが、事実はその全く逆です(ヒップホップの素晴らしさについては別の機会に記事にしようと思います)。

テイラー・スウィフトやマドンナを頂点に、恐るべき才能を持つアーティスト達が競争社会の原理の下でしのぎを削る米国の音楽業界は、(GAFAが世界を席捲しているハイテク産業界と同様に)これからの時代も引き続き音楽の世界を牽引してゆくのでしょう。

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