リック・ウェイクマンの代表作「ヘンリー8世の6人の妻」「アーサー王と円卓の騎士たち」が4チャンネルのハイレゾで再発売

HMVで予約しておいた輸入盤CD/DVDがようやく届きました!




見開きもなかなか豪華な造りです


リック・ウェイクマンといえば、1970~80年代に活躍したプログレッシブ・ロックバンド「イエス」のキーボーディストで、「キーボードの魔術師」といわれるほど、その卓越した技術力と音楽性は目を見張るものでした。

「ヘンリー8世の6人の妻」DVDより


イエス脱退後はソロ活動に転じて、「ヘンリー8世の6人の妻」、「地底探検」、そして「アーサー王と円卓の騎士たち」と次々とソロアルバムを発表しました。

「ヘンリー8世の6人の妻」は1972年リリース(全英チャート7位)、「地底探検」は、ロンドン交響楽団とのライブ録音という珍しい内容にも関わらず、1974年にリリースされるや、全英アルバムチャートで1位を獲得するなど、全世界で1,500万枚のセールスを記録したと言われています。また、「アーサー王と円卓の騎士たち」は1975年リリース(全英チャート2位)と、当時のリック・ウェイクマンの人気と評判は物凄いものがありました。

そのリック・ウェイクマンの代表作のうち、「ヘンリー8世の6人の妻」と「アーサー王と円卓の騎士たち」が、40年あまりの時を経た今、なんと4チャンネルのハイレゾ入りで再発売されたのです。

今回「地底探検」がリリースされなかったのはちょっと残念ですが、もしかしたら今後リリースの予定があるかもしれません。ちなみに「地底探検」は以前DVD化されたようですが、現在は廃盤で入手困難のようです。


Six Wives Of Henry VIII (+DVD)(Deluxe Edition)


「ヘンリー8世の6人の妻」


Myths And Legends Of King Arthur And The Knights Of The Round Table (+DVD)(Deluxe Edition)

「アーサー王と円卓の騎士たち」

作品の紹介は、芽瑠璃堂さんのサイトが良くまとまっていますので、以下引用させていただきました。

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ヘンリー八世と六人の妻(デラックス・エディション)
■キーボードの魔術師、リック・ウェイクマンの実質的ソロ・デビュー・アルバムとして1972年に発表。それまで所属していたストローブスからイエスへと移籍を果たすものの、A&Mレコーズとはまだ契約が残っていたため、その消化のために制作せざるを得なくなった作品。■そんな裏事情はさておき、現在ではウェイクマンの代表作のひとつとして高い評価を得ている。■このナンシー・モリソン著の『ヘンリー八世の私生活』からインスパイアされたコンセプト・アルバムには、イエスのメンバーであるクリス・スクワイア(b)、スティーヴ・ハウ(g)、アラン・ホワイト(ds)やストローブスのデイヴ・カズンズ(E.banjo)、デイヴ・ランバート(g)、さらには元イエス~キング・クリムゾンのビル・ブルーフォード(ds)ら豪華なアーティストが参加。■6人の妻それぞれに合わせた楽曲のなかには、これも契約問題でイエスのアルバムには収録できなかった「Handle With Care」を改題した「アラゴンのキャサリン」も含まれている。全英チャートで7位、全米でも30位にランク・インし、ウェイクマンを一躍世界的なアーティストへと導くことになった傑作。1972年発表。

アーサー王と円卓の騎士たち(デラックス・エディション)
■1975年に発表されたリック・ウェイクマンの3作目のソロ・アルバムは、イエス脱退後に初めてリリースした作品。『ヘンリー八世の六人の妻』、『地底探検』と並んで“文芸三部作”の最後を飾るアルバムでもある。■タイトル通り、アーサー王伝説をテーマとしたトータル・アルバムであり、前作『地底探検』に引き続いてオーケストラや英国王室合唱団を導入。ウェイクマンの弾くシンセサイザーとオーケストレーションが生み出す壮大な音世界は、自身が切り拓いた“クラシックとロックの融合”をさらに推し進めた作品として評判を集めた。■そのなかでも「魔術師マーリン」はその後のステージでも重要なレパートリーとなった屈指の名曲。またLPに付属していた豪華12ページのブックレットも話題を呼んだ。■前作に続きヴォーカルとして参加したアイシュリー・ホルトは、その後もウェイクマンの良きパートナーとして関係が続き、近年のウェイクマン作品においても欠かせない人物となっている。イギリスではチャートの2位、アメリカでは21位を記録。リック・ウェイクマンが残してきた数多の作品のなかでも、いまだに1、2を争うほどの人気を誇るアルバム。1975発表。

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往年のプログレッシブ・ロックの名盤がここ数年で次々とマルチチャンネル&ハイレゾ仕様で再発売される流れにあって、リック・ウェイクマンのソロアルバムまでもがこうしてリリースされるとは、ファンにとっては大変有難いことです。

どちらもCD+DVDの2枚組の仕様になっており、DVD盤に4チャンネルのハイレゾ音源(96kHz/24bit)と映像が収められています(ちなみにディスクのロゴはDVD AudioではなくDVD Videoなので、通常のプレーヤーで再生可能となっています)。

肝心のオーディオの仕様ですが、今回の4チャンネルのサラウンド音源は、クオードミックスと呼ばれるかつて70年代に流行した4チャンネルステレオのQuadraphonic技術をベースに再現しています。

ところが、実際にDVDの中身を再生してみると、「ヘンリー8世の6人の妻」のほうは確かに4chなのですが、「アーサー王と円卓の騎士たち」のほうは、センターとサブウーファーを含めた5.1chの仕様となっていました(AVアンプにもそのように表示されます)。これは不思議ですね。。。

もしかすると全曲インストゥルメンタルの「ヘンリー8世の6人の妻」に対して、「アーサー王と円卓の騎士たち」のほうはボーカル入りなので、声だけセンターから再生されるのかもしれません。

しかし実際に再生してみると、センターとサブウーファーからは何も再生音は聴こえてきませんでした。

そういえば、ピンクフロイドの代表作「狂気」も、70年代にはQuadraphonic技術によって4チャンネルステレオ版が発売されていました。デジタル時代になってマルチチャンネル版SACDがリリースされることになりますが、そのSACDリリース以前には、DVD Audio版の海賊版が流れていたのですが、それも4ch版と、サブウーファーを追加した5.0ch版が混在していたようです。今回はもしかしたら編集の過程で、勝手に未使用のチャンネルが設定されてしまったのかもしれません。

今回はマルチチャンネル音源(96kHz/24bit)のトラックをユニバーサルプレーヤー(OPPO BDP-103)で再生しました。


DVD Audioのメインメニューです

メニュー画面からわかるとおり、4チャンネル(Quad)はMLP(Merridian Lossless Packing)で著作権管理された96/24になっています。MLPを使っているので、これはDVD Audioの仕様と同じはずなのに、どうしてDVD Audioのロゴがないのかは謎です。。。

ちなみにDVD Audio非対応のDVDプレーヤーで再生すると、メニュー画面が微妙に異なり、MLP Lossless 96/24 Quadが消えて代わりにLPCM 96/24 Stereoが追加されているのがわかります。

DVDのメインメニューです



では早速聴いてみましょう。


「ヘンリー8世の6人の妻」

柔らかな音色ですが緊張感のあるオープニングにいきなり引き込まれます。

マルチチャンネル向けマスタリングはかなり控え目で、音がグルグル回ったり特定の楽器だけリアからというようなトリックはありません。ここら辺の音造りは他のプログレマルチ(イエスの「こわれもの」やEL&Pの「恐怖の頭脳改革」など)とは明らかに方向性が違います。無闇に曲をいじっていないマスタリングは聴き易いので、好感が持てます。

イエスソングスにも入っていた曲や、懐かしのメロディが続きます。。。

ピアノ、ハモンド、ムーグ、メロトロン、シンセサイザー、時にはパイプオルガンを織り交ぜた演奏はまさに緻密な芸術品を鑑賞しているかのような錯覚に。。。

プログレッシブ・ロックとは、ロックやジャズを古典クラシックと融合させる壮大な試みですが、この作品は、クラシックのスタイルを踏襲しているものの、ポピュラー音楽が基礎になっていて面白い試みです。ここらへんは、EL&Pの「四部作」に収録されているキース・エマーソンの「ピアノ協奏曲」などとは違いますね。



アラゴンのキャサリン(第一曲)

アン・ブーリン(第五曲)

アン・ブーリンは、小説や映画にもなった「ブーリン家の姉妹」でも有名ですね。ちなみにこの映画は、ナタリーポートマンとスカーレットヨハンソンというハリウッドの2大スターが競演していて、豪華絢爛の仕上がりとなっています。ブルーレイで観るには格好の映画です。

40年前の音源ですが、全曲を通して音は非常にクリアで聴き易い仕上げになっています。

ボーナスDVDには、キャサリン・ハワード(第三曲)のテイクが収録されています。金髪をなびかせて金色のマントをまとったリックウェイクマンの演奏を垣間見ることができます。


「アーサー王と円卓の騎士たち」

こちらは一転、中世の雰囲気らしく重厚なオープニングです。ドラマ性を意識した曲づくりは、オペラの楽曲に近いものがあります。もっとも作風はきわめて古典的で、ケルト音楽や中世の教会音楽を彷彿とさせるところも散見されます。

DVDのメインメニューです


Audio Setupの画面

マルチチャンネル向けのマスタリングはこちらも比較的おとなしく、意図的に音を前後左右に拡散させることはしません。そのせいで、ゆったり落ち着いた雰囲気で楽しむことができました。

アーサー王といえば、こちらもキーラ・ナイトレイが出演した「キング・アーサー」という映画がありましたが、賛否両論の出来でした(私も観たにも関わらずほとんど記憶がありません。。。)


リマスタリングされたStereoのCDのほうは未聴ですが、DVDに収録されている96/24の2ch音源と比較するのも面白いと思います。

2枚を聴き比べると、音作りの方向性は似ており、どちらもオリジナルを尊重した抑え気味のマスタリングであることがわかります。個人的には「アーサー王と円卓の騎士たち」のドラマ性に富んだ構成が好みでした。


以上が2枚のアルバムの試聴記です。


リック・ウェイクマンを聴くとき、どうしても同じプログレバンドであるエマーソン・レイク&パーマーのキース・エマーソンと比較してしまいます。2人の演奏スタイルは全く違うのですが、さまざまな音楽分野の融合を目指したという点では共通点も多く、叙情的な独特のメロディで惹きつけるところは似ているのではと思います。

個人的には学生時代からキース・エマーソンの「ピアノ協奏曲」(特に第三楽章)に魅了され、いつかはフルオーケストラをバックに独奏できたらどんなに素晴らしいだろうかと妄想し、スコアを買ってピアノソロパートを自宅で練習した時期もありました。。。若気の至りですね(笑)

EL&P 四部作


一般には動のキース・エマーソンに対して、静のリック・ウェイクマンといったところでしょうか。。。今回のアルバム購入を機に、静のリック・ウェイクマンをじっくり味わうのも良いかなと考えています。。。







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