[ねんきん定期便の見込み額が低いと思ったら] 厚生年金基金の受給が上乗せされるケースについて

  

「ねんきん定期便」を見て、将来の年金受給額が低いと思ったことはありませんか?



私はずっと以前から、「ねんきん定期便」に記載されている年金受給の試算額が、自分の試算した額よりも低いと感じていました。


実は、将来受給される年金というのは、国から受給される年金とは別に、「企業年金連合会」という団体から受給される年金があることを、最近になって知りました。


この企業年金連合会からの受給というのは、過去に「厚生年金基金」に加入していた期間のある人だけが対象なのですが、「ねんきん定期便」を見るだけでは、自分が対象なのかどうかわかりません。


「企業年金連合会」に問い合わせていろいろ説明を受けて、ようやく「厚生年金基金」の仕組みが理解できました。


そして、将来受給される年金の合計額が、「ねんきん定期便」に記載されている試算額より30%ほど多いことがわかったのです。


私と同じような状況の方は、全国にたくさんいらっしゃると思うので、このブログ記事が参考になればと思います。

1. 年金の仕組み

年金の仕組みについては、ネットを検索すればいくらでも出てくるので、ここではごく簡単に基本的な構成だけ触れます(以下は企業に勤めるサラリーマンの場合)。

現在の日本の年金制度では、20歳以上60歳未満の日本国民全員が年金制度に加入することとなっています。

年金は、その1階部分、2階部分、3階部分、と呼ばれて区分されています。

1階部分:国民年金(全国民)
2階部分:厚生年金(会社員や公務員のみ)
3階部分:厚生年金基金、確定拠出型年金など(一部の会社員や公務員のみ)

年金の仕組み(出典:楽天生命

では、1階部分(国民年金)から見て行きましょう。

(以下、「厚生年金基金とは?厚生年金と何が違うの?」からの引用を含みます)

現在の国民年金の保険料は16,490円(2017年4月以降)で、保険料は毎年物価の変動や賃金水準の変化を考慮し金額が調整されます。

この保険料を20歳から60歳までの全期間(40年間)納めた場合、65歳から基礎年金の支給が始まり、その金額は年77万9,300円(月6万4941円)と全国民一律に決まっています(2017年の時点)。

次に、2階部分(厚生年金)です。

上記の国民年金だけでは、老後の生活に不安を覚えてしまうので、上乗せ部分として厚生年金があります。

厚生年金は、個人の所得によって保険料はそれぞれ違ってきますが、厚生年金の保険料は勤め先と加入者とが折半して支払います。つまり月々の保険料の半分は加入者が支払うが、残りの半分は勤め先が支払ってくれます。

厚生年金や国民年金は公的年金として分類されており、支払われた保険料は公的機関が運用を行ない管理しています。具体的には、保険料年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を行なっています。

厚生年金と国民年金の合計平均受給額は月14万5638円(平成28年)、国民年金のみ(月6万4941円)の約2.2倍です。

以下の表は、厚生年金と国民年金の年金月額の分布(平成30年)を表していますが、これを見るとわかる通り、現役時代に高給取りであっても、年金30万円以上は全国で20,000人とごく少数であることがわかります。


「ねんきん定期便」に記載されているのは、公的年金である厚生年金と国民年金だけであって、次の3階部分(厚生年金基金、確定拠出型年金など)は、どこにも記載されていません。

記載されていないだけなら良いのですが、実は、本来公的年金である厚生年金(老齢厚生年金)の一部が、次の3階部分に加入している場合には、代行として徴収される仕組みになっていたのです。

結果として、3階部分に入っている場合は、2階部分までしか入っていない場合と比較して、「ねんきん定期便」に記載されている年金受給の試算額(見込み額)が、代行徴収の厚生年金(老齢厚生年金)分だけ低くなるという現象が発生するのです。

しかも、3階部分に関しては、多くの場合、将来の年金受給額を把握していないばかりか、3階部分に加入している事実さえ知らずにいるというケースが考えられるのです(私もそうでした)。

今回のトピックである3階部分(厚生年金基金、確定拠出型年金など)について。

ここで、「厚生年金」と「厚生年金基金」は、言葉が似ているのですが、全く違うものなので区別が必要です。

厚生年金基金は、前述の国民年金と厚生年金とは違い、公的年金の制度ではなく私的年金の制度です。

公的機関によって管理・運用がなされる国民年金や厚生年金と違い、厚生年金基金は企業が基金を設立し管理・運用を行っています。

厚生年金基金の保険料は、厚生年金同様会社と折半となります。

2. 厚生年金基金の仕組み

厚生年金基金は、私的年金制度にも関わらず、国が管理する厚生年金(老齢厚生年金)の一部を代行し、さらには企業独自の給付を上乗せして支給するといった特徴があります。

これが、前述の、「ねんきん定期便」に本来含まれているはずの厚生年金額が、私的年金制度で代行されているために、結果として「ねんきん定期便」の見込み額が低くなるという現象を生んでいるのです。

ただし、この「厚生年金基金」は、近年、低金利により資産運用がうまくいかず、積立不足が問題になってしまいました。

そこで、厚生年金保険法が改正され、財政状況がとくに芳しくない基金団体は5年以内に解散させ、母体企業に代行部分を返還させることになり、約560ある厚生年金基金のほぼ90%が解散となる見通しです。

では、厚生年金基金が解散となった場合、将来の年金支給はどうなるのでしょうか?

解散となった場合、確定拠出年金への移管か、「企業年金連合会」へ年金そのものを移管して、「企業年金連合会」が代行運用するというケースがほとんどです。

過去にそのような経緯で解散となった厚生年金基金に加入していたサラリーマンは、解散となる時点で会社から選択肢を提示されていると思います。

しかし、多忙なサラリーマンが、自分の厚生年金基金についてしっかりと理解をしたうえで、どのような形の移管を希望するか自己申告するのはなかなか大変なことです。

なかには、そのような移管があったことさえ記憶にないという人も多いと思います。

厚生年金基金のややこしいところは、企業が基金を設立し管理・運用を行っているので、サラリーマンが会社を変わる(転職や出向など)と、その時点で基金を退会しなければならないことです。

転職や出向などで基金を退会した場合は、一時金としてこれまでの厚生年金基金を受給するか、将来の年金として支給されるまで移管するか、選択することができました。

なので、もし、その時点で、一時金として受け取る選択をした人には、当然ですが、3階部分というものは存在しないことになります。

3. 厚生年金基金の実例

以下は、私のケースで発生した実例をベースに経緯を説明します。

3.1. 移管その1

1990年代に遡るのですが、当時、私が勤務していた会社は、「関東ITソフトウェア健康保険組合」という組合に加入しており、その会社は、「関東ITソフトウェア厚生年金基金」という年金制度に加入していました。

私は自己都合で、その会社を10年未満で退職したのですが、退職と同時に「関東ITソフトウェア厚生年金基金」も脱退をしました。

実は、当時はそのような年金基金自体を認識していなかったので、何の手続きをしたのか全く覚えていません。。。

脱退に伴い、基本加算部分を一時金として支払いか、もしくは「企業年金連合会」への移管か、選択できたということですが、どうやら私は「企業年金連合会」への移管を選択したようです。

「企業年金連合会」への移管の場合には、加入していた期間に応じた年金が、65歳から支給されることになります。

繰り返しになりますが、この「企業年金連合会」へ移管された年金は、国が発行する「ねんきん定期便」には一切記載されません。

公的機関によって管理・運用がなされる国民年金や厚生年金と違い、厚生年金基金は企業が基金を設立し管理・運用を行っているので、当然と言えば当然なのですが。。。

この時点で、「企業年金連合会」へ移管された年金のことは、私の記憶から消え去ってしまいました。。。

3.2. 移管その2

私はその後、再び「関東ITソフトウェア健康保険組合」に加入している会社に転職をしました。

その会社も、以前の会社と同様、「関東ITソフトウェア厚生年金基金」に加入していました。

個人的に、「関東ITソフトウェア厚生年金基金」に再加入したことになります。

そして、今度は、その会社に在籍中に、上記の背景で「関東ITソフトウェア厚生年金基金」が解散することになり、会社側は、新設の「企業型確定拠出型年金」への移管、もしくは「企業年金連合会」への移管を選択することになりました。

私は、(こちらも覚えていないのですが)このときも「企業年金連合会」への移管を選択したようです。

こうして私は、「関東ITソフトウェア厚生年金基金」を2度脱退して、2度とも「企業年金連合会」への移管を選択したのでした。

4. 厚生年金基金の加入を調べるには

このような経緯で、私は3階部分の厚生年金基金については、年金の一部として受給する権利を持っていたのです。

しかし、本人にそのような認識がなく、また、厚生年金基金については加入者の自己管理に任せているため、定期的な郵送物での案内もなければ、ネットでの確認もすることができません。

ではどうやって自分が厚生年金基金に加入しているかどうかを調べれば良いのでしょうか?

後述する企業年金連合会に直接問い合わせるのが一番手っ取り早いのですが、「ねんきんネット」にログインできるのであれば、オンラインで「被保険者記録照会回答票」をダウンロードしてチェックするという方法もあります(もしくは、日本年金機構に電話連絡をして、郵送してもらうことも可能)。


回答表のなかに、(「厚生年金基金加入期間」)という項目が明記されていれば、それが加入の是非を確認することができます。

厚生年金基金に加入しているかどうか不明のままでも、果たして将来受給されるのでしょうか??

それは「おそらく」問題ないかと思います。。。

「企業年金連合会」側では、個人の年金情報は管理しているので、受給資格が発生する65歳が近づいた時点で、書類手続きのために登録住所宛に案内を送ることになっているからです。

が、しかし、「企業年金連合会」に登録されている個人の住所は、果たして65歳時点で住んでいる住所と合致するでしょうか??

合致しない場合は、「企業年金連合会」が住所変更の履歴を調べてくれるということでしが、もし移転先が見つからなかった場合は、最悪の場合、厚生年金基金の受給ができない可能性もあると思います。

そのような事態を避けるためにも、厚生年金基金に加入していたことのある人は、「企業年金連合会」に最新の住所を連絡しておく必要があると思います。

5. 企業年金連合会

企業年金連合会」とは、昭和42年に厚生年金保険法に基づいて設立された厚生年金基金連合会が、平成16年の法改正により平成17年に改称された法人組織のことです。

連合会は厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等の企業年金を短期間で脱退した人などから、年金原資の移換を受けた場合に、年金を給付しています。

また、年金給付を行うための原資となる保有資産の運用を行っています。

企業年金連合会」の公式ページ

電話での問い合わせは以下を参照ください(03-5777-2666)


自分が厚生年金基金に加入していたかどうかを確認するためには、予め基礎年金番号を控えておくと手続きがスムースかと思います。

電話口では、自分が加入していたかどうかは、加入していたと思われる期間の年月日を正確に伝えられないと、自分が厚生年金基金に加入していたかどうか回答してもらえないようで注意が必要です。

希望をすれば、「年金支給義務承諾通知書」という正式な文書を無料で郵送してもらえます。

企業年金連合会からの郵送物

私の場合は、電話で依頼してから2日で到着しました。しっかりと移管2回分の通知書が同封されていました。

年金支給義務承諾通知書(その1)

年金支給義務承諾通知書(その2)

通知書には、将来支払われる年金額(年間の支払見込額)が明記されています。

また、「年金の請求と各種届出等について」というパンフレットも同封されていました。

年金の請求と各種届出等について


パンフレットには、

「住所・氏名変更は忘れずにお届けください。変更の届出を提出していただかないと年金裁定請求書がお手元に届かないおそれがあります

と明記しているので、自衛の意味も含めて、確実に年金の受給を受けるためには、住所・氏名変更は忘れずに行いましょう。

6. 将来の年金見込み額の試算

厚生年金基金からの、将来支払われる年金額(年間の支払見込額)がわかれば、晴れて、ねんきん定期便の情報と併せて、自分の将来の年金受給額の総額が計算できます。

将来支払われる公的年金額の算出は、ねんきんネットにログインして、「将来の年金額を試算する」メニューから行います。

ねんきんネット「将来の年金額を試算する」

「詳細な条件で試算」で行えばより正確な見込み額がわかります。


入力画面がわかりづらいのですが、画面中央の「今後の職業などを追加する」のボタンを押して進みます。


画面中央の「次の質問へ進む」を選択すると、ようやく収入などの入力ページになります。


質問5の「今後の勤め先は厚生年金基金に加入していますか」は、現在の勤務先が厚生年金基金に加入していない限り「いいえ」を選択します(ほとんどのケースが「いいえ」)。

すべての入力が完了したら、赤い「試算する」ボタンを押すと、結果表示されます。

年金の試算結果

試算結果は、パターン名をつけて保存しておけば、最大5件まで、いつでも参照できるようになります。

以上が、ねんきんネットで将来の公的年金額を試算する方法でした。

もちろん、年金には、公的年金と厚生年金基金だけでなく、確定拠出型年金や、個人年金保険など、個人によってさまざまなものがあるかと思います。

ねんきん定期便は、郵送での送付は年1回(誕生月)ですが、電子版のねんきん定期便は、ねんきんネットでいつでも最新版のダウンロードが可能です。

これは余談ですが、妻も私と同じケースで、過去に厚生年金基金に加入していたことが今回の調べで判明しました。

配偶者の年金も同様に世帯の合計所得として計算すれば、さらにきめ細かく将来の人生設計に活用することができると思います。

私は、積立型タイプの個人年金保険に加入しており、60歳から70歳までの10年間に月額で一定額が支払われます。

余談ですが、この個人年金保険は、加入したのが昭和63年と、今から30年以上前でした。

当時は、現在のゼロ金利の前の時代で、金利は8%と非常に高く設定されており、いわゆる「お宝保険」です。

金融機関からすると、逆ザヤ保険と言われ、あの手この手で加入者に解約させて、新しいより金利の低い保険商品に乗り換えるように何度も勧誘されたものです。

将来の年金見込み額の試算の話に戻ります。

具体的な数値は控えますが、私の場合は、7才下の妻がいるので、世帯合計では以下のような計算となります(65歳で退職を前提)。
  • 60歳~65歳 給与+ 個人年金保険
  • 65歳~70歳 公的年金 + 厚生年金基金 + 個人年金保険
  • 70歳~72歳 公的年金 + 厚生年金基金
  • 72歳~ 公的年金(夫+妻)+ 厚生年金基金(夫+妻)
厳密には、上記に加えて個人型確定拠出型年金が加わることになります。

実際に計算したところ、厚生年金基金を加味すると、「ねんきん定期便」に記載されている公的年金の見込み額よりも30%ほどの増額となることがわかりました。

厚生年金基金を把握するのとしないのとでは、大きな差が発生します。

もし、ねんきん定期便の見込み額が低いと感じたり、厚生年金基金に加入していたことがある心当たりがあれば、企業年金連合会に問い合わせをしてはいかがでしょうか。

コメント