映画『ノーカントリー』:血も凍るサイコ殺し屋を描いたコーエン兄弟製作のスリラー

 映画『ノーカントリー』は、コーエン兄弟製作のスリラー映画です。



これはとんでもなく怖ろしい映画です。コーエン兄弟製作のスリラー映画、原題は No Country for Old Men、つまり、老人には理解し難い犯罪の国になってしまった、ということです。映画では引退を目前にした警官(トミー・リー・ジョーンズが好演)にとって、現代の犯罪はもはや理解の度を越えているという凄まじいバイオレンスが展開します。

この映画の見どころはもちろん、(実質的)主演のハビエル・バルデムが演じる殺人犯の怪演ぶりなのですが、麻薬取引現場の壮絶さは、おそらく現代の社会(特にメキシコの辺境など)では日常茶飯事であるだろうし、映画で描かれる殺戮の描写があながち大袈裟とは限らないところにこの映画の恐ろしさはあります。

ひと昔の映画では、このような偏執的な殺人犯は、あまりにも突飛過ぎて発想さえ浮かばなかったかもしれません。しかし、日常のストレスがエスカレートして精神異常をきたす現代社会では、このような精神偏執者が引き起こす事件が毎日のようにニュースに流れます。ストーカーがアイドルをメッタ刺しにする、変質者が隣人を暴行殺人して遺体をバラバラにしてトイレに流す、死体を冷蔵庫に保管する事件など枚挙にいとまがありません。。。

主人公の殺し屋が携える武器からして、尋常ではありません。サイレンサー付きの散弾銃?や、空気圧で相手の額に穴を開ける装置、などなど。

ハビエル・バルデム演じる殺し屋

この映画でも、殺し屋と、主人公の妻が対面して、妻が殺し屋を咎める会話のシーンがあります。殺し屋がどう反応したかは映画では明らかにされませんが、殺し屋の心には彼女の訴えは何も響かなかったのではないかと推測されます。

このあたりの冷徹さも、上記の「コラテラル」でトム・クルーズが一瞬良心の呵責を覚えるシーンと対比してより一層、現代社会の犯罪の底知れぬ深さが浮き彫りになります。

2008年アカデミー賞、作品賞、監督賞、助演男優賞(ハビエル・バルデム)受賞の作品。

ちなみに、このハビエル・バルデムの奥さんは、なんとあの超美人セクシー女優のペネロペ・クルスなんですね。美女と野獣かと思いきや、ハビエル・バルデムって実生活の写真を見ると意外にかなりのハンサムなんです。納得。

(2022年8月8日 追記)
原作『血と暴力の国』を読みました。


映画はかなり原作に忠実に作られていますね。映画を観たあとだとあらすじも理解できているので読み進みやすかったです。

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