映画『ブルー・ベルベット』:デヴィッド・リンチ監督のシュールな世界が炸裂

映画『ブルー・ベルベット』は、デヴィッド・リンチ監督のシュールな世界が炸裂する作品です。


「ブルー・ベルベット」
退廃的/官能的なサスペンス映画です。出演はリンチ作品ではお馴染みの面々、カイル・マクラクラン主演、ほかにイザベラ・ロッセリーニ(かつてのリンチの奥さんでした)、ローラ・ダーン、そして、デニス・ホッパーが狂気の殺人者を怪演しています。しかしカイル・マクラクランもローラ・ダーンも若い。。。役柄は大学生(!)ですから。

物語は平和な田舎町に潜む狂気を描いています。主人公は偶然道端に落ちていた人間の耳を見つけたことから倒錯した性と暴力のアブノーマルな世界に踏み込んでいってしまいます。

「この世は不思議なところだ」

主人公が何度も口にするセリフです。

「ブルー・ベルベット」という表題とは裏腹に、この映画の不快指数はかなり高いです。普段観たくない、目を背けたいものを無理やり見せられているような感覚。。。

映画を娯楽として鑑賞するのは、日常生活から乖離したファンタジーの世界に浸ることでストレスを解消するという目的があると思いますが、この映画はその真逆を強要させられます。

人妻のイザベラ・ロッセリーニを人目を忍んで抱く習慣から抜け出せなくなったカイル・マクラクランは、SMの世界に踏み込んでしまおうという自分を意識して悩みます。「ツイン・ピークス」のクーパー捜査官と違い、一線を超えず踏み止まるところが違いますが。。。

公開当時は全米の善良な市民から猛反発を食らったとか。。。しかしその後再評価されたそうです。犯罪王国のアメリカと違って、一見平和に見える日本ですが、残虐かつ偏執的な事件が後を絶たないことを考えると、この映画で描かれているような日常に潜む狂気というのは結構身近なものなのかもしれません。

ちなみにローラ・ダーンはスゴイ女優ですね。。。下はボーイフレンドに裏切られたと知ったときのショック 顔です。

ローラ・ダーン

個人的に印象に残ったシーンはここ。ピンクの洋服を着たブタのような醜態女が(なぜか)車の上で巨体をくねらせて踊ります。こんなシュールなシーンはなかなかありませんね。。。

このシーンです

もうひとつは、クライマックス近く、ドロシーの部屋のシーンです。一瞬時間が停止したかのような錯覚です(左の死体はなぜか直立不動)。

ドロシーの部屋のシーン

左のTV画面には顔を突っ込んで割れたような跡が、また奥のキッチンの壁には血糊がベッタリと。。。誰の仕業なのか映画では明確にされませんが、こんな残虐な仕業はデニス・ホッパーしかありません。しかし彼は一度去ったアパートに再び戻ってきます。しかも変装して。。。

このシーンだけが唯一解釈不能ですが、リンチの作品にしては、時系列もストレートで難解な場面も少なく、そういう意味ではリラックスして鑑賞することができる作品ではないでしょうか。

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