映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』:スティーブン・キング原作「IT」のリメイク版は微妙な仕上がり

映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』は、スティーブン・キング原作「IT」のリメイク版です。



この作品を2019年に観た映画ベスト10に入れるのは悩みました。

というのは、原作は、スティーブン・キングの大傑作「IT」で、映画は1990年のミニテレビシリーズのリメイクということもあり、個人的には期待があまりに高かった分、作品の出来には正直がっかりしたからです。

北米での興行収入は3億2,748万ドルで、これは、M・ナイト・シャマラン監督のホラー映画No.1の大ヒットを記録した『シックス・センス』が稼いだ2億9,350万ドルを上回り、事実上のホラー映画No.1の大ヒットを記録しました(Wikiより)。

世間的には大ヒットなのですが、どうしても最新技術を駆使して生成されたピエロが、金属性の鋭い牙を剥き出しにこれでもかと迫ってきても、大した恐怖心が沸きませんでした。

水野美紀が演じた日本映画の「口裂け女」(2007年)のほうが余程恐ろしい映画でした。

原作のITの素晴らしさは、幼少時代に子供の連続殺人の犯人であるIT(ピエロの形をした実在しない空想の産物)を、かつての街の仲間が30年振りに集まって退治しに出かけるという壮大な冒険ドラマである点なのですが、この映画は、ITを繰り返し画面に登場させることによって、単なる連続殺人鬼 vs. 幼馴染グループの戦いに平面化してしまった点にあると思います。

スティーブン・キングの名作『スタンド・バイ・ミー』が、少年が大人の世界への冒険へ繰り出すのに対して、この『IT』は、大人が少年時代の(自己の内面に潜む)恐怖にケリをつけるために過去に向かって冒険に繰り出す(そして命を落とす仲間もいる)という逆の話なのです。

1990年のミニテレビシリーズのほうは、SFXもなければ何もない時代なので、ピエロはほとんど出てきません。低予算作品だったので、エンターテインメント性は薄かったのですが、底なしの恐怖心は記憶に残りました。

いろいろな予備知識なしで観たらもっと楽しめたのでは。。。と思います。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』は、私が2019年に観た100本の映画のベスト10のひとつです。

コメント