iPodとウォークマン:NW-S313を買ってみてポータブル音楽プレーヤーの平成を振り返る

平成も最後の年末となりました。昨晩ワールドビジネスサテライトで年末スペシャルで平成30年間で私たちの働き方はどう変化したのか?を発売された製品とともに紹介していました。

そのなかで、2005年9月に発売されたアップルのiPod nano(アイポッド ナノ)を当時のアップルCEO、スティーブ・ジョブズ自身が、穿いていたジーンズのポケットから取り出して世間を驚かせた発表会の映像が流れました。

iPod nano発表

iPod nanoは当時一世を風靡したiPodのフラッシュメモリ版デジタルオーディオプレーヤーで、当時この薄さ軽さ(そしてサービスと統合した製品の完成度の高さ)は衝撃的でした。

ちなみに、同日に発表されたソニーの新型ウォークマン「Aシリーズ」は。。。


こんな形態をしていました。このウォークマン「Aシリーズ」のメモリタイプは、化粧瓶シリーズと呼ばれました。

ウォークマン「Aシリーズ」化粧瓶

その後のAppleとSonyの命運については周知の通りです。

2005年当時、私はiPod nanoを即刻購入して、その音楽プレーヤーとしての便利さはもちろん、保存した画像のスクロール表示の速さに驚いたり、(当時としては画期的だった)歌詞をテキストファイル形式で保存して、音楽を聴きながら歌詞を見るようなことも試していました。

その後10年以上の月日が経ち、iPhoneが市場を席捲するようになると、もはや市場は音楽専用プレーヤーというものに興味がなくなり、ポータブル音楽プレーヤーは、中高生のエントリー向けモデルか、ハイレゾ対応のマニア向けモデルに2極化しました。

個人的には、ハイレゾ嗜好だったので、ポータブル音楽プレーヤーとしてハイレゾ対応のPONOというアメリカのプレーヤーをネット注文して使っていました。また、同じハイレゾ対応のオンキヨーのDP-X1や、ウォークマンのA10も使っていました。

史上最強の携帯オーディオプレーヤーPono ~バランスケーブル編~
最近は、ハイレゾやバランスケーブルの煩雑さに飽きてしまい、加齢とともに駄耳の進行もあって、ポータブル音楽プレーヤーは使わずに、もっぱらiPhoneをプレーヤーとして使っています。

久しぶりにソニーのウォークマンについてネットで調べてみたところ、散々な酷評になっていることを知りました。

Amazonのレビューを見ると星は3.3


コメントはトップレビューから「残念」「ゴミカス」「昔と比べると残念」



どうやら旧機種から価格据え置きで大幅なスペックダウン(ハード・ソフト両面で)が酷評の原因のようです。

2ちゃんねるでも、「ソニーさん、ライバルが撤退した途端とんでもない暴挙に出る」とうスレが立っていて、散々な状態です。旧機種との機能比較表があったので転記します。


Bluetoothのコーデックでは、高音質技術のaptXが省略されてしまっています。以前Xperiaをカーオーディオに接続したときにaptXのコーデックの音の良さに感動した身としては、残念な限りです。

他も含めてこれはヒドイ改悪ですね。。。

ところが、量販の店頭に行ってみると、ソニーのウォークマンが一番良い場所に大々的に展示されており、売れ筋商品のようで、とても製品に問題のあるようには見えません。

そこで、試しに1台エントリーモデルのSシリーズを買ってみました。

買ったのは、「ソニー SONY ウォークマン Sシリーズ 4GB NW-S313 : Bluetooth対応 最大52時間連続再生 イヤホン付属 2017年モデル」です。

ウォークマン NW-S313

このモデルは、余分な機能をそぎ落としたと紹介されています。ハイレゾ再生不可、BluetoothはSBCプロファイルのみ(apt-xやLDACはナシ)、ノイズキャンセリング機能は付いています。

レビューで酷評されているように筐体は金属からプラスチック樹脂製に変更、代わりに重量は50gから53gにアップしています。

音楽を転送するアプリはまたまた変更となって、最新はMusic Centerという名前です。以前のMedia Goほどの豊富な機能の多くが削除され、互換性もないことがユーザの悪評を買っているようです。

しかし、今回すっかりSpotifyに慣れてしまった身としては、一番困ったのは、

「聴きたい音楽をウォークマンに転送する手段がない」

これに尽きます。。。

もはや、CDをPCでリッピングしてそれをウォークマンに転送するなんて面倒臭すぎて、いちいちライブラリを作ろうなんて気にならないことです。

期待していたBluetoothもブツブツ切れるし、画面操作のためのボタンの使い勝手も今一つ、これでは商品オーナーとしての満足度はありません。

意外にも良いなと思ったのは、FLAC再生ができることでした。iPhoneでは未だにネイティブ対応していない(対応再生ソフトでは可能)ので、これはウォークマンの勝ちですね。

ただ、Music Center for PCではFLACなんて対応していないので、FLACファイルをPCのエクスプローラで対象フォルダにコピーしてやるという直感的ではない操作が必要になります。

意外にも、普段親のiPhoneやiPadを使いこなしている小学生の娘はこのウォークマンを「何となくオモチャみたいで好き」と気に入ったようでした。

娘は気に入ったようです

しかし、付属のノイズキャンセリング対応のイヤホンが子供の耳には大きすぎて、付属のサイズの異なるイヤパッドにしてもずり落ちてしまうということで、子供向けにデザインされているわけでもなさそうです。。。

そこで、Amazonで販売されている中華製の格安Bluetooth完全ワイヤレスイヤホンをいくつか買って試したのですが、iPhoneでは問題なく接続でき、自動ON/OFFできる製品でも、このWalkmanでは、接続が安定しなかったり、そもそもイヤホンをケースに収めてもBluetoothが自動で切断しなかったり、果ては繰り返し延々とBluetoothの接続を試みるなど、使い勝手は最悪でした。

なかでも、前回接続したときの音量が記憶されずに、再接続をすると爆音(音量最大)で接続されてしまうという、通称「Walkmanの爆音問題」は、このモデルでも発生してしまいました。

「Walkmanの爆音問題」というのは、実は、Android ver.4.0の問題のようですが、OSが古いバージョンのAndroidを改変して作られているこのWalkmanでは、回避方法がなく、相性が悪いイヤホンとは致命的な問題です。

良くも悪くも、この商品はソニーがブランド力を利用して割高値でビギナー向けに販売しているものだと思いました。Appleがオーディオプレーヤー市場から事実上撤退した今となっては、生き残りを賭けて市場競争している企業として、その販売姿勢は間違っているとは思いません。

要は、ソニーはこの手のエントリーモデルはすでに捨て商品として、遥かに付加価値の高い製品にフォーカスしているのです。

実際、「ソニー SONY ウォークマン ZXシリーズ 64GB NW-ZX300 : Bluetooth/microSD/Φ4.4mmバランス接続/ハイレゾ対応 最大26時間連続再生 2017年モデル}は、市場価格が5万円以上もする製品でありながら、Amazonのレビューでも4.2と高い評価になっています。

ウォークマンのフラッグシップモデルNW-WM1Z は、銅筐体で何と20万円を超える価格で販売されているのです。

NW-WM1Z

逆に言えば、今までがエントリーモデルにあれもこれも付加価値をつけて薄利商売を続け、結果的に企業の体力を損ない研究開発投資や成長力も棄損してしまったこれまでの戦略が間違っていたわけです。

そういう意味では、このソニーの商品戦略は、私は正しい判断だと思います。前述のレビューで酷評しているユーザーは、ソニーにとっては口うるさいだけの小金しか払わない歓迎せざるユーザーなわけです。このようなユーザーを「以前からのユーザーを大切にしなければならない云々」などというのは時代錯誤も甚だしい、そんなことを続けていたらグローバル競争に負けてあっという間に市場から淘汰されてしまう時代です。

現行のモデルで不満なユーザーは、「どうぞ中華製の他社の格安ポータブルプレーヤーに移ってください」というのがソニーの本音だと思います。

優秀なソニーの社員は、そういったことを全て予想した上で、このスペックダウンのエントリーモデルを投入したものと想像できます。これは英断ではないでしょうか。

話を元に戻しますが、このエントリーモデルのウォークマンは、オンラインの音楽配信サービスに繋がらないという理由で、私にとっては全くの利用価値のない商品でした。

かといって、ソニー製のハイレゾ対応のハイエンドを買いたいとも思いません。

以前のブログに書いたように、最近の私は、

iPhone + Spotify + 完全独立ワイヤレスBluetoothイヤホン

で完全にロックインされて満足しているからです。
¥2,699の完全ワイヤレス イヤホン ZHW-D06 Bluetoothのコスパの高さに思う事
音質的にはもちろん大したことはありませんが、それでも少なくとも13年前のiPod nanoよりは良い音で鳴ってくれます。何といっても無限の音楽ライブラリにいつでもアクセスできる利便性は何物にも代えがたいです。

平成も今年で最後になりますが、おそらくこの技術革新が続けば、数年後には、

iPhone + Spotify + 完全独立ワイヤレスBluetoothイヤホン

でハイレゾ音楽でも何でも圧倒的なクオリティで無尽蔵に聴けるようになる日が来るでしょう。

その製品(とサービス)を実現するのはもしかしたら中国や韓国の企業かもしれません。ひょっとしたら米国のベンチャー企業かもしれませんが、日本企業ではないことだけは間違いないでしょう。

そういう意味で、平成という時代は、日本のオーディオ業界ひいては日本の家電業界が普及価格帯の表舞台から完全に姿を消した時代として記憶に残るものになると思います。



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コメント

  1. オーディオに限らず日本人自体が世界からパージされて来ていますよ。
    あと10年もすれば人口の50%が65歳以上で、お先真っ暗です。(笑)

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    1. 平成という時代は、日本人がグローバル市場で存在感を示すことができた最後の時代になるのかもしれませんね。莫大な貯蓄の大半は高齢者が保有しているので、相続税やら何やらで国の1000兆円の借金返済に充てられて、成長領域には一切投資されずに消耗されてしまうのでしょうね。大変な時代に遭遇したものです。せめて戦争が起きない平和な次世代でありますように。

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