新築でホームシアターをリビングに作ろう!~電源と部材について

ブログの表題「モニオの部屋」というのは、拙宅のリビングシアタールームのことです。オーディオの音質を特に追求してあれこれ試行錯誤しながら造りました。なかでも「電源」と「部材」は、音質を決定的に左右する要素として、施工に工夫を凝らしたところです。

モニオの部屋

以下は「モニオの部屋」施工時のリビングシアター導入記です。これから新築でホームシアターを検討されている方に少しでも参考になればと思います。

1.電源


どんなに高級なオーディオ機器であっても、供給される電源の品質が悪ければ、再生される音は歪んたものになってしまいます。ここで言う電源の品質というのは、電力会社から引き込み供給される電気の周波数特性の劣化、家庭用電気製品のインバータ回路などに起因するジッタや高周波、電圧変動の影響などを極力抑えて如何に劣化させずにオーディオ機器まで供給するかということです。

極論ですが、電力会社の6,600Vの配電線から直接家庭に引き込み電線を張り、自宅敷地内に変圧器を設置して、そこから100/200Vに降圧したものをオーディオ機器に供給する形態が理想的です。通称「マイポール」と呼ばれている、オーディオマニアが自宅敷地に電柱を設置して、そこに変圧器を設置することで実現していますが、これは一般的にはあまりに敷居が高いものです。

100/200Vの電力を家庭内に引き込む際に、電柱からの外部引き込み線のグレードは、実は世帯主(施主)が無償で自由に決めることができます。電源の品質を極力落とさないためには、引き込み線でも最上位グレードである引き込み用ビニール絶縁電線の38mm2(DV38)を指定することをお勧めします。DV38はマンションなど複数世帯の建物に引き込む極太の電線ですので、一軒家に使用されることは普通はありません。

電力ケーブルDV38の引込み

電線の引き込みの次は、配電盤の選択になります。上の写真のように2階で電線の引き込み後、検針盤を経由して2階のオーディオ機器専用の分電盤への給電と、2階のその他の電気設備への配電盤への給電と並行に接続して、オーディオ機器とその他の電気設備への電力供給を分離しています。オーディオグレードの分電盤は、別個アース接地工事をして極力アース抵抗を下げました。

オーディオグレードの分電盤もピンキリですが、コスパの優れた出水電器のものを選びました。

出水電器の分電盤

出水電器の分電盤は出水電器と相談して、EO-01という電灯分電盤を改造したものを採用しました。付属品含めてだいたい10万円程度です。

EO-01に使っているELB(漏電ブレーカー)はPanasonicのBJW-30Nという音質的には定評のあるものが採用されています。振動対策としてJ1シートをブレーカーとプレートの間に入れてあります。端子はチタン製の特別にメッキしたもので、ブレーカ用ネジも非磁性体のものを採用しました。

出水電器の分電盤の内部

以下は施工会社との電源周りの打ち合わせのときのメモです。

(第1回打ち合わせメモから)

・電柱からの外部引込み線はDV38で東京電力に依頼済み、追加費用発生なし
・引込み後は、引込み開閉器(MCB)までCV22ケーブルを使用。MCBは多目的室に設置
・MCBから家庭用とオーディオ用の電力系統に分岐。家庭用はCV14もしくはCV22、オーディオ用はCV22ケーブルを使用。
・電力ケーブルはフジクラ電線製を使用
・オーディオ用分電盤は出水電器製の2回路もしくは4回路のものを予定(施主側で型番を決めて準備)、多目的室に設置。
・オーディオ用分電盤の出力はCV8でリビングの壁コンセント(テックエキスパーツ様の造作家具の背面)に配線、壁コンセントは施主支給。
・アースは接地抵抗値を測定し、抵抗値によっては棒を2本にする(場所は未定)
・アース切り離しはオーディオ専用分電盤内で可能と前提。壁コンセントまでのオーディオ電源はアース付きとする。
・プロジェクタの電源スイッチを壁(照明スイッチと同じ位置)に新設

(第2回打ち合わせメモから)

・オーディオ用分電盤は出水電器製のコンパクト分電盤(2回路用)を使用、多目的室南側入口入って左壁の上部に設置。
・オーディオ用分電盤の出力はCV8でリビングの壁コンセントに配線、生活用壁コンセントから距離を取って右側に設置。上下2口を横に2つで合計4口(アース付き)。一つはクロシロ相、もう一つはシロアカ相というように同相を2ペアとする。
・アースは西側敷地に棒を2本打つ。接地抵抗値を測定し、抵抗値が低く出ない場合は別途ご相談。

(メモ以上)

概要まとめると、電柱からの引き込みからオーディオ分電盤のMCBインまでDV38、MCBアウトから配電盤まではCV22、そして コンパクト分電盤アウトから壁コンセントまではCV5.5で施工としました。

上からDV38, CV22, CV5.5

施工は、ハウスメーカーとカスタムインストーラ、そして現場の施工会社との3社との打ち合わせで役割や作業分担など詳細を明確に決める必要があります。ここは施主が主導権を取ってグイグイ進めなければならないところです。

拙宅の接地抵抗は20m杭を2本打って20オームでした。接地抵抗は低いほど良く、条件が良ければ一桁の抵抗値を実現できたケースもありますが、こればかりは土壌など外部環境に依存するので運に任せるしかありません。

オーディオ専用に接地抵抗

このようにして、リビングの電源コンセントまでの配線は設計されました。あとは壁コンセントですが、ここにはホスピタルグレードのものを使います。私は壁コンセントには音質で定評のあるオヤイデ電気のSWO-DX-ULTIMOを、コンセントプレートにはフルテックの102-Dを選びました。

コンセント(オヤイデ電気のSWO-DX-ULTIMO)


コンセントプレート(フルテックの102-D)

ホスピタルグレードの壁コンセントは、電源ケーブルを挿入すると、しっかりと食い込んで容易には抜けない設計になっているため、信頼性は抜群です。一方、コンセントプレートは、電流が直接流れる場所ではないにも関わらず、音に影響があると言われているパーツです。ハイエンドの製品ではコンセントプレートだけで10万円以上のものまで販売されています!オーディオは突き詰めると趣味の世界なので何でもありではありますが、少なくともそんなところに10万円も投資をするのは一般的な感覚では極めてコストパフォーマンスが悪いのは間違いないです。

施工された壁コンセント

また電圧を100Vだけでなく200Vも取れるようにする方法も良く行われているようです(基本的に高圧で受けたほうが電圧変動の影響を避けられるため)。私も200V契約を考えましたが、200Vから100Vへのステップダウン変圧器への投資がかなりのレベルにしないと意味がないので、100V単体での受電契約に落ち着きました。

こうして完成したオーディオの電源関係は、一般の回路とかなりのレベルで遮断されているので、冷蔵庫や他の電子機器の影響を受けにくい仕様になりました。実際、市販されているノイズハーベスタのような装置で測定しても、電源は非常にクリーンであることがわかりました。

2.部材


電源の次に重要なポイントは、床と壁の施工です。拙宅はリビングシアターは2階になっています。もちろん理想的には1階なのですが、陽当たりを求めたことと、天井を高くしたいという妻の要望から2階になりました。部屋の広さは約13畳で。隣のダイニングキッチンルームとは敷居なしで繋がっています。

リビングとダイニングの関係

2階となると、オーディオ的には床の強度が重要となります。拙宅は無垢フローリングの下に防振マットを敷く標準的な施工ですが、床補強は根太材質を210mm厚のLVLに変更し、間隔も通常より2/3ほど狭めて303mmで施工して強度増しています。結果、相当重量のある2階床となり、建築時は大工さんが木材の積み上げに大変な苦労をされていました。

根太材質を210mm厚のLVLに(施工中)

防振マットは、防振マット+1階の天井と2階のフロア連結部分のアブソーバで重量&軽量衝撃音の緩和という設計になっています。階下への影響を抑えてなおかつ2階フロアをスピーカーの振動の影響を受けないようにするには、吊り天井方式を止めて1階天井と2階フロアを物理的に分離したほうがよいとも考えましたが、施工上のコストが跳ね上がるため断念しました。

フローリングはマルホンの無垢のシルバーチェリー(オイル仕上げ)を選択しました(こちらです)。フローリングの木材は基本的に硬いほうが音質的には有利なのですが、表面仕上げの種類にも大きく左右されるので一概には言えないようです。材質の硬い広葉樹系(チェリーなど)に対して柔らかい針葉樹系のヒノキやパインではどのような音の違いがあるのか、クラシックやジャズなど音楽のジャンルとの相性もあるようです。

フローリング(無垢のシルバーチェリー)

このあたりの話題はPhilewebの過去の日記(こちらこちら)に記してあります。

窓は2重サッシ(外ステンレス、内樹脂)、壁面は、構造用合板の代わりに構造用スターウッド(MDF)を採用、スペック的には壁倍率が構造用合板の3.0に対して3.6とより強固にしました。その内側は強化石膏ボード(12.5mm)、断熱材はロックウール壁(90mm)です。その他の部位の断熱材(ロックウール)は、天井180mm, 階下55mm(吸音)となっています。西側壁面は将来壁掛けの大型TV設置に対応できるよう補強のため、全面にコンパネ(9mm)を追加施工しました。

石膏ボード

遮音マット

ロックウール

天井は、折上天井として、折上げ高さは、1段目は150mm、2段目(間接照明用スペース)は100mm+200mm(スペース)で合計で300mmに設計。1段目の天井寸法は2600mm x 2600mm、2段目は2200mm x 2120mmで東西方向を長辺とする長方形です。2120mmは正面のオーディオ造作家具の棚ラインと同一寸法で合わせてあります。

リビングの隣は間仕切りなしでダイニングに連結しているので、水平方向の定在波(フラッターエコー)は発生しません。上下の定在波を避けるためには、理想的には天井に勾配をつけて床との水平関係をなくすよう設計すれば理想的ですが、折上天井にしてあるため相当の効果はあると判断しました。

施工に関しては、オーディオ業界では有名な、「石井式のリスニングルーム」というものがあります(詳しくはこちら)。書籍も発行されています。松下電器産業(現・パナソニック)で長年ハイファイ・オーディオ機器開発に携わってきた石井伸一郎氏が提唱する考え方を指します。

石井式ではオーディオやホームシアターで“いい音”を得るためには、その音を鳴らす部屋の縦横高さの比率が重要であり、「1 : 1.18 : 1.38」の比率が最も良いとされていま。

石井式のリスニングルーム(こちらのサイトより引用)

 この比率に忠実にオーディオルームを設計できれば良いのですが、リビングシアターでは所詮叶わないので、設計思想だけ参考にさせていただきました。

拙宅のリビングルームは、縦横それぞれ4550mm、高さ2850mm(折上げ天井中心部)なので、4550:4550:2850 = 1:1.00:0.63 と石井式の理想とする比率と比較すると、天井高さが圧倒的に不足している状態です。

部屋の音響に関しては、施工後に音響パネルや家具の配置、カーペットの敷設、御影石などの強固なラックの導入などいろいろな工夫で微調整は可能ですが、その基礎となる部材は、新築時の施工によって決定されます。

竣工平面図(2F)

私のケースでは、施工後に反響レベルが想定より高かったため、大きめのソファを入れて、大型の観葉植物やクッションなどを置いて部屋で音が自然に拡散されるように工夫しています。またYAMAHAのACP-2という調音パネルをフロントスピーカーの背後に設置して音質の微調整を行っています。

YAMAHAの調音パネル

以上、電源と部材について紹介しました。もちろんオーディオやホームシアターの設計にはほかに様々な要素がありますが、電源と部材の二つは新築時に施工するのが最も効果的であるため、ぜひとも詳細に検討していただきたい項目です。



(おわり)

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